職務発明で特許を受ける権利は社員に歸属し、この権利を企業が社員から承継するときには「相当の対価」を受けることができることになっている(特許法三五条)。

 特許庁の有識者会議の議論で、この規定の見直しが検討されている。それは、この制度を一八〇度転換し、社員に配慮しながらも会社歸属にするというものである。

 職務発明は会社がリスクをとる決定のもと会社の設備や資金を使い、多くの社員のチームプレーに支えられた成果だと考えるのが至当だからである、という。

 今回ノーベル賞を貰った中村さんに青色発光ダイオード(LED)の特許について日亜科学が支払った額は二万円で、これを不服とした中村さんが正当な対価を求めて地裁に訴え、二〇〇億円の支払いを命じる判決が下ったが、会社は反撥し、結局八億円で和解し、結着した。

 このような事案があっての特許法改正の論議で、常識的に考えれば、当初の二万えんというのもひどく少ない額だと思うが、又、二〇〇億円というのもいささか非常識ではないか、と思う。

 改正案についての批判はこの段階では避けるとして、双方の納得をえられるような法文が書くのはなかなか難しいが、職務発明の利益は一義的には会社に属するとしても、まあまあと思われる常識的な考え方で法律を書けないか、と思う。