清家隆子という洋裁学校に通う若い女性が当時、日本に一軒だけというオート・クチュールの店「オート・クチュール・バルファンの松平ユキにスカウトされて、彼女のもとで働くようになる。上昇志向の強い隆子がユキを追い抜こうとして、逆に手ひどい目に遭わされる。本然として眼がさめ、仮縫の今日から明日の成功を狙って旅立つ決心をするという物語。
有吉佐和子が亡くなって五年になるか。とにかく一本筋の通った、気の強い女性で、頭が切れる人であった。
マージャンが大好きで、下手。負けると大へん御機嫌が悪くなるので、少し手加減したら負けて、とられた一万円札にサインをさせられたことを思い出す。その札を玄関に貼ってニヤリとしていたと後で聞いた。
もう少し生かして、彼女でなければ書けないような作品を遺して貰いたかった。