若い人でも名前は御存知でしょうが、かつて民社党に春日一幸なる人物がいて、書記長を務めた。この人の茶飲み話はまことに秀逸であった。
いつか石野事務次官、村上主計局長と春日先生と会食したことがある。丁度、予算審議が一区切りついた頃ではなかったか。あの頃は、公明党、民社党はいわば自民党の友党でもあって、割と仲良くやっていたので、一幸書記長のご慰労を兼ねた会であったと思う。
アルコールの回る程に一幸節が冴えて来てついにワイ談となった。
わしがまだある先生の書生をしていた時、彼女とよろしくやっているそこに先生が突然帰って来た。さあ、大へんと思ったが、突然のことで、押し入れに潜り込んだが、その部屋に先生が入って来たので、出られない。声はたてられないし、往生をした、と言う話から延々一時間余り。独演会に我々はただ笑っているより他なかった。
ある時、選挙になったので、各地を演説で歩いていたが、ある町での会で、一しきり演説をぶったら、群衆の中から声が上がった。
「花ちゃんはどうしている」という声があがった。花ちゃんとは、その地の出身の一幸さんの何人もいる彼女の一人であるという。一幸氏、少しも騒がず「ハッ、可愛がっております」といって深々と頭を下げた。ワッという笑いと大きな拍手で盛り上がったという。
一幸さんはつづけて曰く、わしや彼女のところを一回りするのに一週間じゃ足りないよ。もう整理したらいい、と皆がいうけどもつ年のとった者もいて、その連中をほうり出すわけにもいかんぢゃないか、そうだろ、と言っていた。
そう言われてみると、納得したような、しないような気がするのが妙だが、いずれにしても愛すべき人物のように思えてくるから、これも人徳かな、と思う。
然し、もうああいう人物には余り会えないような気がする。古き良き時代の産物か?