25・3・27

 城山三郎の編で表題の本を読んでいる。変なもので偶然先に「下」を読み、今「上」を読んでいる。

 この本は政財界など各界の名の知れた人が多分本人が書いているらしく、余り飾り気のない、自分を曝した文章が並んでいて興味深かった。

 私が、意外の感を含めて感銘したのは水野成夫さんの「もう一人の母」、「ふたりの母」であった。

 昭和のはじめ日本共産党に入党、中央委員のとき検挙され、獄中転向後、フランス文学の飜訳など文筆業に専念したが、後々経済界で乞われて国策パルプ、フジテレビ、産経新聞の社長などを勤め、財界四天皇と言われたまことに多才、振幅の大きい人生を送った人である。

 彼の文章は飜訳などで読んでいたが、この随筆もまことにためらいもなく自在にペンを動かしている感じで、今更ながら魅力を覚えた。

 この本はいい本である。続いて読もう。