24・12・9

 勘三郎が亡くなってテレビや新聞に追悼の記事の出ない日はない。いい役者だった。

 ずっと若い頃、小学生時代、姉の久里子と一緒に親戚の三島の家でよく見かけた。もう50年も以前になる。

 彼の芝居には長い伝統のある歌舞伎の世界を伝承しようという熱い心と、又歌舞技を今の代に拡げようとする意欲とがないまぜになっていたように思う。

 世の中は目に見えない縁で繋がっている。彼の父勘之郎の「飯はまだか」というテレビで作家である彼に原稿を頼みに行く雑誌長の編集の役で共演した私が、ドラマでテレビに現れたたった一回のチャンスであったし、又、去年日本橋三越の「女の一生」の舞台で私の家内司葉子が久里子と主演したことも生々しい記憶である。

 いずれにしても、真剣な勘三郎の舞台には、どこかふっと抜けた遊びがあった、のでないか、その余裕が鍛え抜いた芸の間であろう。