24.8.13
切角司法試験に合格し、司法研修所での研修も終了したのに、弁護士として就職できない人が増えているという。かつては年収一千万円は固いと言われていたのに、今では五百万円を確保するのが、やっとという人もいるという。それでも法律事務所に入れるものはいい方で、就職できない人はどこかの事務所に席だけ置かせて貰ったり、軒下を貸して貰ったりしている人も少なくないという。
私の嘗ての選挙区鳥取県では、四十年程前は、県の東中西、合わせて弁護士の数は約二十人だったのが、現在は四十人を越しているという。民事にしても、刑事にしても事件の数がそれだけ増えたのだろうか。そうでないならば、結局、増えた弁護士の数で報酬を分け合う格好になるのではないか。
思うに、司法試験合格者の数を一千人から三倍の三千人に増やす計画の理由の一つに、裁判事務の促進があった筈である。とくに常時二百件も三百件も案件を抱えている裁判官の負担を軽減し、裁判をスピード・アップすることが急務とされていた。
ところが、裁判官の数は平成十六年から二十一年で十五パーセント程増えているに過ぎない。処理能力には自から限界があろう。検察官も同じ様な状態でそれ程増えていない。となると、弁護士になるしかないのであるが、これが、前に述べたような有様なのである。
私は外国での裁判の実情はよく承知していない。しかし、どう考えても、日本の裁判は時間がかかり過ぎる嫌いがある。切角判決が出されても、その対世間の効果は、刑事事件などの場合、すこぶる薄くなっている。
そこで、私は思う。司法試験の合格者数の目標を三千人から二千人以下に減らすこと、裁判官の定数を思い切って増やすこと。それにも一つ、司法研修制度である。研修生の急増に拘わらず、研修所の拡充をしていないので、新司法試験合格者については研修期間を昔の二年から一年に短縮したばかりではなく、研修所における研修期間を著しく短くしていると聞く。実務研修も大事であるが、研修所でみっちり基礎を教える方がもっと必要なのではないか。
私は、戦前旧憲法時代に高等文官試験の司法科を合格したのであるが、当時(昭和十七年)受験者は約二千人で、合格者は二百人ぐらいであった。
その後、訴訟手続きも変ったし、社会的情勢も変化しているので、この数字などは参考にならないと思うが、司法の世界においても、制度の改正に向けて諸種の議論があることではあるし、早急に司法試験合格者数の目標縮減を含めて、制度の改革を真剣に議論して貰いたいと思っている。