24.7.29

女装の主人の持つ高層ビルの「沙高楼」という扁額を揚げたペントハウスに寄り集う各界の人々が貴重な自分の体験を語るという、百物語の一つである。

話をする人は、絶対に誇張や飾りを言わず、聞いた人は夢にも他言をしない、という絶対のルールのもとに心行くまで出来事を語るという筋である。

著名な刀釼鑑定家、映画の名キャメラマン、ただ一筋に生きた庭師、ヤクザの大親分とまことにヴァラィアティに飛んでいる。話は浅田らしく、まことに読む人を語り部の世界に引き込むような流暢さで進められる。


沙高樓綺譚 (徳間文庫)/徳間書店
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