24・7・1

 毎日新聞に連載された吉田信子の小説の映画化で、時代を越えて人の心に訴えかけるテーマを持った作品である。

 豪壮な屋敷を持つ安宅家の跡継ぎ宗一(船越英二)は生まれつきの精神薄弱者だが、美しい心を持っている。宗一と結婚した国子(田中絹代)は、自ら先頭に立って豚舎の経営を引き受け、家を護るために汗水を流している。

 そこへ、事業に破れた宗一の異母弟である譲二(三橋達也)とその妻(乙羽信子)が同居することになる。心やさしい正子は国子にはほっておかれる宗一に同情してテニスの相手をしたり、ピアノのレッスンをしたりする。宗一は正子に心が傾くようになるが、それは国子には気に入らない。

 正子とも会えず、押し込め同然の目に遭っている宗一は、ある日、幻の正子の声を追って薄野を歩くうち高い崖から落ちて死んで了う。

 親族とぐるになって安宅家の財産の処分に介入しようとする譲二の策謀を知り、国子は家族会議の席上、財産の半分は精薄者の施設に寄付し、残りの半分は譲二に讓ると宣言する。

 今後は施設の保母になるという国子に、夫に愛憎をつかして別れるという正子も一緒に保母になって働くと言う、ところで映画は終る。

  船越は役柄を実によく自然に演じている。田中、乙羽とも好演。



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