24.6.24

休日なので、続けざまにDVD2本見た。

溝口健二の「祇園囃子」は京の花街・祇園を舞台に、そこで暮らす人々を描いた人間ドラマである。

母を亡くし舞妓志願で頼ってきた娘(若尾文子)を引き受けた売れっ子芸者(木暮美千代)は、特定の旦那も持たずに頑張っていたが、置屋の女将(浪速千栄子)に背いたばっかりにお座敷がかからなくなって了う。

仕方なく、そのおかみの機嫌を直し、又妹芸者の全く不本意な身売りを防ぐために仕事を貰いたいばっかりに会社社長が取り持つ役所の課長に身を委せる、という花街エレジーである。

木暮は祇園の芸伎らしい品のある役になり切っているし、若尾もまことに初々しく、又、気さんじな男をハネつける役柄にふさわしい。

田坂具隆監督の「土と兵隊」は、戦争中に作られた火野葦平原作の映画化である。彼の「麦と兵隊」、「花と兵隊」とこの「土と兵隊」は兵隊三部作といわれて、当時爆発的に読まれたものである。

「糞尿譚」で芥川賞を受けた火野は九州若松港の石炭沖仲仕 玉井組の跡目を継いだが、昭和12年、日中戦争勃発とともに9月応召、11月杭州港に敵前上陸、徐州作戦に従軍という経歴であった。

その作戦に陸軍報道部員として書いた「麦と兵隊」は発行部数120万というベストセラーになったが、私も学生の頃読んで、感動したことを思い出す。

しかし、この映画は、戦争中にいはば広報用に作られた感があって、同じ支那で戦争を体験した私にとっては、まことに詰らない映画と言はざるをえないのは残念である。

一言、余計なことをつけ加えると、私は昭和20年の1月、武漢地区の塩不足を補うべく北支からの塩の輸送を督促するため天津の第四野戦鉄道司令部に出張を命じられた帰途、徐州の駅で猛烈な米空軍の銃爆撃に遭い、駅のホームで逃げまどったことがあった。

徐州は正に鉄道交通の要衝であった。近くにあれが激戦のあった大虎山だと教えられたのを覚えている。その頃は負け知らずの日本の部隊が正に「徐州、徐州と軍馬は進」んでいたのである。



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