23.12.17
水上勉の原作、吉村公三郎の監督で、宮川一夫の撮影にかかる美しいモノクロの作品である。
昭和の初期、越前の国の寒村・竹神村に住む竹細工職人の喜助(山下洵一郎
)は、亡き父・喜左衛門が通った芦原の遊女・玉枝(若尾文子)と所帯を持つことになるが、父との関係を知っている喜助は玉枝をいわば母と思って決して抱くことはなかった。
その後、喜助は芦原で玉枝の親しい光子(中村玉緒)から喜左衛門と玉枝とは身体の交わりはなかったことを聞いて懊悩が晴れたが、喜助が京に行っての不在間訪れた京の古美術商鮫島の番頭忠平(西村晃)がたまたま玉枝が以前いた島原の馴染客であった。喜助の留守もあって、忠平に無理矢理に求められた玉枝は力負けして許して了うが、そのため身体の不調を訴えた玉枝は四ヶ月の身重であることを医師に知らされて愕然とする。何とかわからないで処置をしようと決意する。玉枝が頼みにした忠平に又犯されそうになり、そこを脱出した彼女は昔の縁を辿って身体の処置を図るが失敗し、死を覚悟した時にはしなくも渡し舟の中で流産をする(船頭・中村雁治郎)。やっとの思いで竹神に戻った玉枝は疲労の果に喜助に見とられて死ぬ。喜助も竹人形作りを放棄してうつつとなって過した一ヶ月の後に自らも果てる。
久しぶりに水上文学に接し、又、いい役者が柄にあった役について素晴らしく、眼の保養となった。
この作品は芸術座の舞台でも演じられた。舞台も良かった。水上勉は私と同年で親しかったが、この作品は雁の寺などと並んで、彼の代表作といえよう。若狭物語の一つである。