この間、新聞を読んでいたら、都道府県県庁所在地と川崎・北九州の政令市2市の計49都市の中で京都市がパンの世帯当たり購入量でも支出額でも第一位であることが記されていた。総務省の07~09年の家計調査だという(二月十日付読売新聞・朝)
パンは片手で素早く食べることができるため、西陣織の工場で重宝がられ、そこから家庭に浸透したのだそうだ。ちなみにこの新聞によると、江戸末期初めて日本人向けのパンを焼き、業界で「パンの祖」といわれるのは、かの大砲を作るため反射炉を韮山に築いた代官江川太郎左衛門であるという。だいたい、京都は千年の都であり、歴史と伝統を重んじる一方、新しい物好きの一面がある。日本で最初に路面電車が走ったのも、京都だし、小学校も全国に先駆けて開校された。私は、昭和二十四年、戦後間もない頃、下京の税務署長として短いながら京都に勤務したこともあって、いくらか京都の街を知っている積りであるが、京都人はたしかに新しいもの好きのところがあるという気がした。京都はとくに共産党の勢力が強く、一時は定数五人の衆議院選挙区で共産党の候補が二人も当選していたのは、新しいもの好きのせいだといっては失礼かもしれないが、古い人間関係ががんじがらめになって、重圧となっているのを、丁度メタンガスがふくれ上って重い蓋をはね飛ばすような現象の一つかもしれないな、と思ったこともある。ともあれ京都人の生活に溶け込んでいるパンが漬物や京菓子、伏見の酒などと並ぶ京土産の定番になる日が、いつか来るかもしれないという。23.2.16