公立小中学校の学級編成基準は一クラス40人が上限となっている。私が主計局の文部担当主査として昭和28年「義務教育諸学校の学級編成基準に関する法律」の起案に携わった時、一クラスの上限は50人であったから、少数化はかなり進んでいるのである。しかも当時は現実に50人の学級が多かったが、今は、実際一クラスに当り小学校の児童数は32人、中学校の生徒は33人となって、40人の上限を遥かに下回っている。

 ところで、文科省は一クラスの上限を40人から35人に、小学校の低学年は30人に引き下げることを検討している。試算では4万5千人の教員増と新たに毎年3000億円の人件費を要するという。果たして、引き下げを行う必要があるのか。

 意見を言うためには、もっと教育の現場に当って調査をしなければならないことは言うまでもないが、とりあえず、いくつかの問題点を挙げてみる。

 現在教員に負荷されている事務的な仕事が余りにも多いことが度々指摘されている。戦前は学校の教員は校長といえども修身などを担当するなど全員が授業を持っていたが、今は授業を持っていない教員が普通の学校で、校長など3人はいると聞いている。

 昔と較べて調査・報告事項が大幅に増えているというし、又、教員以外の事務職員、ランセラーなど専門的スタッフが米・英では4割以上いるというのに、日本の小中学校は2割に過ぎないといわれている。

 しかし、このことは、学級編成基準を引き下げて、教員数を増やすこととは直接関係がない筈で、学校の教務以外の負担を思い切って縮減するよう文科省で至急に検討を進めるべきである。もっとも活用の道がないような調査報告書などを作らせたがるのが、役所の悪弊であると反省すべきである。

 少子化現象の進行と市町村合併の推進によって小中学校の校数は合併統合によりかなり大幅に減って来てはいるが、なお、スクールバスなど交通手段の確保を通じて学校数を教育内容に支障がないように充分配意しつつ、さらに減少させることを考えるべきである。

 また、学校における授業もただ単に一学級当りの児童生徒数を減らすことによって、その内容が充実させられると考えるべきではなく、むしろ40人ぐらいの規模のクラスの中でこそ、社会人としての資質の向上がなしうる鍛錬が行われるのではないか、と思う。

 一頃もてはやされたゆとり教育の成果について強い反省が行われているが、さらに小学級化の推進によって、ただ徒らに教員増を招き、ただでさえ苦しい国、地方の財政負担をさらに重くすることは極力回避すべきはないか。