羅臼から海抜八百メートル余の知床峠を越えてウトロの町に泊る。残雪はまだ多く、ガスがかった小雨の中からは国後島も見えなかったが、この眼と鼻の先にある北方四島は歴史的に見ても明らかに日本の領土であり、八月九日突如日ソ不可侵条約を一方的に破って侵入して来たソ連軍に占領されたのである。

 あの激しい戦闘の行なわれた沖縄も米国は全面返還したのであるから、ソ連、そして今ロシアがこの島の占領を続ける理由は全くないと言わざるをえない。

 昭和三十年の日ソ共同宣言第九項に歯舞諸島、色丹島の二島を平和条約締結の際に引き渡すとののみ記していることは、まことに残念なことであるが、さりとて国後島、択捉島の二島を返還しないとも書いていない。

 いずれにしても、戦後六十有四年。この辺で領土問題の決着を望むや切である。ただし三・五島のような中途半端な代案には断固反対である。

(2009.6.11)