六月六日初日の三越劇場で「女の一生」がかかる。葉子が初めて新派の舞台に参加する。波乃久里子さんが主役。戌井さんの演出で、屹度いい芝居になるだろう。一ヶ月公演で、あと毎月各地巡業ということのようだ。

 戦前学生時代明治座で花柳章太郎、水谷八重子の「鶴八鶴次郎」など数々の名舞台を見た。

 「鶴亀」、「婦系図」、「小指」、「太夫さん」など今でも演目と舞台を思い出す。

 たしか、昭和四十七年十二月も押し詰って「鶴八鶴次郎」を観に行き、鶴八と別れた鶴次郎が酒屋で酒をあおっているくだりで呼び出されて役所に戻ったことを今でも覚えている。あれが、章太郎の芝居の見納めになったが、本当にいい役者だった。

 八重子の一寸低いがよく通るせりふ回しとあの独特の歩き方。今の八重子もまだ母親に及ばないのかな、と思ったりしている。


(2009.6.6)