置屋主人の帳

置屋主人の帳

筆がはこぶまゝに、綴りまひょ。
よろしゅう。

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桜蕊降る
春おそい季節


やはらかな陽さす  其の日のあさ





『きれいな べゝやなぁ』





着慣れない着物が
丁寧なやはらかい 手つきで整えられてゆく


『ちゃんと手ぇ 伸ばしぃ』


綺麗な布が 一枚いちまい
不安が被さるやうに 其れは身を包む。


秋斉「・・・はい

これから どこにいくん?」




目の前の
やさしい瞳は すこし悲しげに微笑むだけで
答えてくれない


不安で おもわず 覗き込む





『おいで』



瞬間、
ふわっと
対の季の香りが
身を包んだ




『あんさんは御勤めに行くんどす
泣かんよに

しゃんと背ぇのばしぃ
立派に仕えるんや』





 こくん。




抱きしめられたまま
ひとつうなずく


ほんたうは聞きたいことは沢山あった

何故このやうな、着物を着せられているのか、
勤めというものが何故か、



しかし
頭の上の優しい声は

震えていた



「はい

ははさま、」