「召喚のキャンセルは、
不可です」
おじさんは淡々とした声で
告げた。
雷真は静かに
頷く。
「分かりました。
確認したかっただけです」
そのまま、気になっていた
核心を口にする。
「差支えなければ、
お伺いしたいのですが...
なぜ私が
選ばれたのでしょうか?」
おじさんは書類を
1枚めくりながら
事務的に答えた。
「理由はあります。
あなたはーー
”異世界のことをよく
考える人”でした」
雷真はわずかに目を
開く。
「異世界の、
ことですか...?」
「ええ。日常の中でふと
別の世界について想像したり
もし違う環境ならどうなるかを
思い描いたりする。
そういう思考を、習慣のように
繰り返していたようですね」
おじさんの声には、
皮肉という程の鋭さはない。
ただ、少しだけ現代を
理解している者らしい
含みを感じた。
「今の時代、そういう
方は珍しくありません。
忙しい中で、つい
"別の可能性”へ視線を
向けてしまう...そういう
方々がこちらの選定に
反応しやすいんです」
雷真は苦笑ともつかない
表情で、
「確かに、考えていました。
仕事の合間とか、
帰り道とか...」
おじさんは頷き、
静かに言葉を添えた。
「現実逃避、という程
大げさなものではありませ。
ただ心の何処かで
”別の場所”を求める思考は
こちらからすると”呼びやすい”
傾向にありまして。
あなたは、その点で条件を
満たしていたのです」
雷真は自然と姿勢を正した。
「理由を教えていただき、
ありがとうございます。
思っていたよりも、
ずっと現実的というか
人間らしい理由なんですね」
「そうですね。多くの方が
似た理由で選ばれます、
だからこそ、特別視する
必要も有りませんよ」
雷真は小さく深呼吸し、
その言葉を受け止めた。