迷った挙句、元銀行員の新人A君を受け入れて、事業拡大に舵を切った。
ロゴ、商品の商標登録、海外販路の開拓、新商品の開発と順調なペット用品事業。
これまで1人でやっていた作業を任せることで、ようやく少し心にも余裕が出来、新商品のアイデアが溢れ出した。
僕が彼を雇った理由は自分の仕事量を減らすという目的だけではない。
2若い頃から野心が人一倍強かった僕は、どんな職場でも先輩や上司に嫌われてばかりだった。
それゆえに、根拠のない自信はあるも挑戦する機会に恵まれなかった。
安定した職業を捨て、このペット用品事業に飛び込んできた彼に昔の自分を重ねた。
「彼に思いっきり挑戦出来る舞台を与えてみよう。」
僕は元々業界そのものにこだわりなんかなかった。
今でもそうだ。
自分の知らない業界であろうと、不安よりも好奇心がいつも勝つ。
ペット用品事業を彼に任せ僕は法人の次なる一手を考えていた。
そんな時、思っても見なかった新規事業の話が突然転がり込んできた。
大きなチャンスに思えたその事業だったが、それがまさに、地獄の始まりだった。

