この写真は、結局デビューすることのなかったテクノトリオを
売り出すために20年前以上前に撮影されたもの。
何故、僕が持っているかというと真ん中に写っているのが叔母だから。
このテクノトリオにまつまる話が傑作で、
3人は小学校の先生で忘年会の余興用にバンドを結成した。
音楽は好きだったらしいけど、毎週木曜日にオンエアされてた
『ザ・ベストテン』を欠かさず見ていたような
聴くのは歌謡曲専門というタイプ。
その番組で見たYMOの印象があまりに強烈で
‘のぼせあがっていた’叔母たちはYMOのコピーをやろう
ということになったらしい。
だけど、誰もシンセなんて持ってないし、
当時はとても高価なものだったから
機材は小学校の音楽室にあるものを使うことにした。
鉄琴、木琴、大太鼓、小太鼓、シンバル、ピアニカ、マラカスなどなど。
もちろん練習は音楽室で放課後に行い
楽譜は音大を出ていた叔母が試行錯誤しながら作ったみたい。
“音楽”なのか“YMO”なのか
夢中になった原因が何だったのか分からないけど
3人は魔法にかかったように練習に明け暮れ
それは大絶賛を浴びた忘年会が終わっても続いた。
もちろん、音楽室でね。
いつからか誰からともなく、デビューしたいなと思い始めたみたい。
だけど、公務員なわけだし、そこには“ルール”という壁が
あることを承知していたので、ライブハウスはもちろん
コンテストに出ることすらためらっていた。
「YMOは、ヨーロッパから火がついて日本には逆輸入される形で売れた」
という話を練習後の音楽室で聞いた叔母は、ピンときたらしいんだよね。
「密閉した瓶にカセットテープを入れて、海に流そうよ!」
3人はそれがどこか知らない土地に流れ着くなんて信じなかった。
だけど、なんとなくモヤモヤした気分が晴れるかなと思って
早速、デモテープ作りを始めた。
マイクもオープンリールも全て放送室に行けば揃っているからね。
校長先生をはじめ、他の先生たちには
「音楽授業の教材作り」ということにして
休みの日もレコーディングさせてもらったというから、
ある意味おおらかな時代だったんだろうね。
そうやって作られた100本の瓶詰めデモテープは
連絡先が書かれたメモと一緒に
近くの海から、知らない土地に向けて放たれたんだ。

なんか、長くなったから続きは明日書くね。