ヨーロッパの歴史を語ろうとする上で、もう一つ忘れてはならないのが、キリスト教である。
ランケは、ローマ帝国が成した事業のうち、キリスト教を生んだことが最も大なるものであるとしている。
私はこれまでにローマの歴史的業績につき、ランケとは違う感想を持っている。
ローマ帝国が成した最大の事業は、支配のシステムではないだろうか。
その一つにキリスト教が入るとは思わないではないのだが。
キリスト教は紀元1世紀に生まれた宗教であるが、しばらくはユダヤ教の分派の扱いであった。
その頃ローマは、共和制から帝国に支配体制を変更させたその勢力が最も強い頃であった。
やがて、ローマ帝国の支配が弱体化してくると、キリスト教の一神教的思想を帝国支配に利用しようと、コンスタンティヌス帝がキリスト教を国教と定めた。
ローマ皇帝は神により地上の支配を信託された者であるとしたのである。
この考え方は、それまでのローマ帝国の皇帝観である「市民の第一人者」とする考え方を革命的に変えるものだった。
つまり我々市民の中より選ばれた一人から、神に選ばれた特別な一人にローマ皇帝はなった。
以後、ヨーロッパの王権はこの考え方を基礎に形作られていく。
(眠くなったのでまたいつか続く)