haveの語源は印欧基語のkap-という語幹(つかむという意味)にまでさかのぼる。
この祖形は子音を変化させずにラテン語に継承され,capere (to hold) などに残っている.
kap (印欧語 頭をつかむ、の意)とは本来、野生動物を捕獲する時の、頭を掴む動作を表す。
そこから、英語に伝わる間に3つの意味が派生した。
・頭
・つかむ
・家畜(捕らえた動物から)※獲物を柵で囲って、所有する。
そして家畜は財産であった。特に、牛は使役にも食用にも有用であった。
●have への変化過程
kap(印欧語) → cap (ラテン語で k が c に変化)
→ 発音上、cap が hap に変化
→ hap が hab に (発音上、p が b に変化)
→ b が v に変化
→ have に
もともと、have は keep がルーツである。
keepもhaveも「捕まえる」という意味に通じる。つまり、捕まえて「保持」「保有」することである。
haveは基本言語でありながら、語派により異なる。
英語:have
ラテン語:habeo ※英語のgive
ギリシャ語:ekho つかむ
ロシア語:imet 取る
have は、よく使われる英語の動詞ランキングで「第2位」である。
そして現在ではその意味は「持つ」ではなく「所有」の意味の方がほとんどだ。
では、have(印欧祖語 *kap-) が「所有」を意味する所有動詞(他動詞)になったのは、いつか?
それはゲルマン祖語が成立した時期(紀元前5世紀=2,500年前頃)以降である。
この頃、ゲルマン祖語の時代に、have(*habejanan)が登場。「所有」を表す動詞に have を使用するようになった。
印欧祖語・語根 *kap の原義は、「つかむ・とらえる、自分のものにする」だった。
その行為の結果として、「所有する・所持する・持っている」をも意味するようになった。
古英語の時代は上記同様、「所有」を表す動詞に have(habban)を使用していた。
そして、960年前(1060年)~(960年間)のノルマン・コンクエスト以降は、have が「位置関係」も表すようになった。
以上をまとめると、
have は「時空間 領域に持つ」で、所有・位置関係・経験 を表す。
原義は「つかむ・とらえる、自分のものにする」だが、
その行為の結果として「所有する・所持する・持つ」を意味する。
「所有」は、空間・時間の両方におよび、まとめると下のようになる。
●have のコアイメージは「時空間 領域に持つ」
・空間領域に持つ:所有/位置関係
・時間領域に持つ:経験
話が飛躍しすぎたが、haveの持つ時間的な感覚の完了形とは、本来の一般動詞としてのhaveの意味とは全く別のものだ。
英語にはもともと完了形はない。ヨーロッパの言語で完了形があったのはラテン語くらいである。
では何故英語に完了形が出来たのか。
これにはキリスト教の伝道師の影響がある。
563年にケルト系キリスト教が大ブリテン島に最初のキリスト教として伝来した。
Grammarはラテン語の文法を古英語で書いたものであり、土地の言語で書かれたこのラテン語文法書は中世のヨーロッパで最初のものと見なされる。
アルフレッド大王の残した著作と彼が行った教育事業は、荒廃状態にあった当時のイングランドの再生を図ったことに止まらず、キリスト教精神の伝承、英語史上に貴重な資料を残す大事業であった。
キリスト教が政治、文化、国民生活に大きな役割を果たしてきた。
ウィクリフは一国にあってその国の言語で書かれた聖書がないことを訴え、自ら聖書の英語翻訳の作業に取り組んだ。
当時、ローマ・カトリック教会の公認聖書であったラテン語訳聖書Vulgateから中英語への翻訳は一門の協力を得て完成した。
15世紀のイングランドでは、女性を含む多くの中産階級の人々は、少なくとも英語の読み書きを学ぶまでに教育の普及が進んでいた。
英語の時間は God の意志に従い流れる。
英語の時制の起源自体はキリスト教から派生したわけではない。
しかしキリスト教の感覚がわかると納得のいく英語の表現は時制に限らずたくさんある。
ここで重要なことは、ラテン語の聖書が英語に翻訳されていることである。
イギリス以外のヨーロッパでは、聖書の翻訳は許されなかった。
聖書はラテン語で聖職者だけのもので、現地住民が知るためには聖職者の力が必要だった。
これはルターが宗教改革を起こすまでずっと続いた。
何故かイギリスだけが唯一キリスト教の伝道師の祝福を受けた。
そして、これが英語の中に完了形が誕生するきっかけとなった。
アルフレッド大王の時にラテン語の聖書が英語に翻訳された。
この時、1つの問題が起きた。ラテン語の完了形が英語になかったのである。
そこでキリスト教の伝道師が考え、haveを使った完了形を誕生させた。
当時、教会の仕事は学校の役割だった。
そこで教えるのは2つ。
1つは文法。もう1つは讃美歌である。
実際、英語の周波数は高く、バイオリンと同じ周波数で話す。
つまり、会話にも使える音楽である。
そして文法とはラテン語で書かれた聖書の朗読である。
聖書はラテン語なので、英語の訳が添えられた。
この時、ラテン語の完了形が英語に入ったのである。
ここから英語の完了形が始まるが、ここで使うhaveは一般動詞のhaveとは違う。
完了形で使うhaveとは新しく出来たhave動詞である。
have動詞とは完了形のために出来た新しい動詞で、be動詞のような存在だが、正確にはちょっと違う。
ラテン語の完了形を英語にするために、haveを使って完了形っぽく見せたのである。
have+過去分詞で、過去の出来事を引きずってる感を出した。
ここで再度思い出してほしいのは、英語は1時制ということである。
英語の時間は God の意志に従い流れる。
つまり、未来は神が作るので、まだない。
未来形とは、今強く思っているから本当は現在形。
willとは、絶対こうするんだと今強く思っているのだから、
本当は未来形ではなく、現在形。
過去形とは、過去はそうだったが今は違うという、
現在が基準の言葉。
つまり、英語は本来1時制だった。
この1時制の英語に、キリスト教の伝道師たちは完了形を作ったのである。
では完了形のhave動詞とは何か?
英語は本来1時制と言うことは、過去に想いをはせる言葉がない。
be動詞とは目の前の状況についの説明に使う。
英語とは本来、目の前の新鮮さにこだわる言語である。
だから、目の前の物に冠詞のtheやaを付けて、詳しく説明する。
目の前の新鮮さに特化した言語である。
だからbe動詞は目の前、つまり位置で言うと前を説明する。
そしてhave動詞とは、本来英語では過ぎ去った過去とは振り返ることのできない後ろ。
つまり完了形のhave動詞とは、本来英語にはない過去の感覚、
つまり、後ろに対して使う。
過ぎ去った後ろの過去専用の動詞、それがhave動詞である。
そして過去の記憶とは感情の世界、つまり完了形とは表現豊かな言葉である。
さらにhaveには、すでにそうなっているという受身の意味もあり、
過去に触れることで相手から距離的に1歩下がった、謙虚で落ち着いた表現でもある。
完了形と過去形にはこれだけの違いがある。
have動詞とはキリスト教の伝道師の仕掛けた、最高のマジックである。
そしてアルフレッド大王は、キリスト教とアングロサクソンの文化を融合させた。
アングロサクソンの文化については別の機会に説明する。
※アメリカのような悪質な文化ではない。