もし仮に

「初心者におすすめの旅客機プラモデルは?」
と聞かれたら、私は
「ハセガワのJALのキット、機種は何でも良い」
と答えます。

なぜなら塗装がシンプルで、デカールの難易度も低いからです。

とはいえANAもデカールがすべて用意されているので、多少ハードルは上がるものの、いきなりチャレンジしても全く問題はありません。

 

逆にいきなりはちょっと...と思うのがPeachのA320ceo(商品名にはceoと書かれてはいませんが、neoとの区別のためあえて記載)です。
理由は塗装が前提で、色も自分で調色しなければならないためです。

 

流石にハードルが高すぎるとハセガワも思ったのか、以降に発売された限定版キットには胴体塗装部のデカールが用意されるようになりました。

 

 

これがそのうちの一つであるA320neo。

今回はあえてそのデカールを使い、その使用感と仕上がり具合を確かめてみようと思います。

 

 

胴体を仮組み。ハセガワA320は少ないパーツで実機の特徴を良く再現できていると思います。
 

 

胴体裏には付属の重りをセットします。このキットには窓などの開口部がないので、胴体裏は黒塗装せずに進めることにします。

 

 

あまりいただけないのが主翼後端の厚み。1/200スケールということを考えるといささか厚すぎるので(強度上仕方ないかもしれませんが)削っていきます。削り作業にはガイアノーツのマイクロセラブレードを使用。本来はバリ取り用ですが、こういった慎重に削る必要がある作業にも重宝します。デザインナイフだと削りすぎることがありますし、何より安全に作業できます。

 

 

左が削る前、右が削った後です。写真では分かりにくいですが、体感的には結構それっぽくなった気がします。

 

 

エンジンのパーツ構成です。オーソドックスなパーツ割ですが、ファンブレードを保持する部分が前からは見えなくなっているのが良いですね。747や767は段差を消すためにプラ板巻いたりパテで埋めたりいつも一苦労なのでありがたいです。

 

 

サフを吹いて様子見。スケール・サイズ感のわりにモールドはしっかりしているので、リアリティを追求する方は埋めてしまっても良いかもしれません。私はキットの素材を活かす派(自称)なのでそのままです。

 

 

合わせ目に#400のペーパーを軽く当ててやるとどこが凹んでいるのかがよくわかります。ここをめがけてパテを盛っていくわけです。主翼の方はA321と共用のため、モールドを一部埋める必要があります。

 

 

ポリパテを盛って整形。サフが残った箇所の上にちょうどパテが残ればとりあえず元あった段差は消えることになります。ただし、パテを盛り過ぎたところはまた段差ができるのでそれはもう一回サフを吹いて確かめます。同じように主翼も埋めたいモールドの箇所が黄色くなればパテで埋まった証です。

 

 

ポリパテは気泡が出来やすいのが難点です。一回ではさすがに上手くいきませんので追いパテ。エンジンもインテイク内の合わせ目はどうしても目立つので、同時に整形します。

 

 

上手くまとまったら白塗装へ。主翼は後付けにするので、プラ板を突き刺して持ち手としながら塗装しています。

 

 

胴体の白に加え、翼もグレーに塗っておきました。胴体はほぼデカールになりますが、下地としてやはり白塗装は必要だと思います。おそらくハセガワとしては、胴体は塗装しなくてもそのままデカールを貼ればPeachになるよ!という狙いだと思いますが、合わせ目消しやらなんやらやると結局はこうなります。

 

 

尾翼のリーディングエッジのシルバーとAPUはデカールに含まれていないので塗装します。

 

 

さて、前置きはこのあたりにして本題に入ります()

いよいよデカールを貼っていくわけですが、念のため貼る箇所の下地は#4000で整えておきました。

 

 

果たしてどこから貼っていくか?が問題になりますが、私は垂直尾翼から、つまり後ろから前にかけて貼っていくようにしました。前から貼ろうにも目安がアンテナ穴くらいしかないためです。通常は左舷もしくは右舷の片側ずつ貼り、十分乾燥させてからもう片方を、という戦法を取っていますが、左右両側にまたがるような大判デカールがあるので左右同時並行で貼っていきます。

 

 

順に前へ。デカールが重なったところは色が濃くなってしまい、本当は重ならないように貼っていきたかったのですが、上部アンテナ用の切り欠きを合わせなければならないため、重ねて貼らざるを得ませんでした。前から順に貼っていっても同じ結果になるため、特に貼る順番は気にしなくてもいいのかもしれません。

 

 

翼胴フェアリング部分のデカールは別になっています。おかげで割と無理なく貼ることができました。(胴体裏面を除いて)

 

 

デカールが用意されているのはあくまで胴体とエンジンカウルのため、翼やエンジンナセルは塗装します。世の中にはコロガード用のデカールも存在しますが、わざわざ探して買うほどのものでもないので大人しく塗装しています。エアバス機のコロガード塗装色は未だに自分の中で解が出ていません...。今回はとりあえずクレオスのニュートラルグレーです。

 

 

ピーチ色のデカールを十分乾燥させてから窓などのデカールを貼っていきます。レジはとりあえずトップナンバーのJA201Pにしておきました。

 

 

エンジンカウルもデカールを使用するので白ベースで塗装しておきました。

 

 

こちらのデカールは予想通りなかなか難儀でした。切れ目は入っていますが、どうあがいてもシワができます。そしてマークソフターを使って無理やり馴染ませようとすると破れます。1枚もので貼るのではなく、4分割くらいに切って貼った方が良かったかもしれません。サイズ感は特に問題ありませんでした。

 

 

ハセガワA320のキットで注意しなくてはならないのがコクピットウインドウ。
胴体の面とデカール形状が合っていないためか、そのまま貼ると吊り目のようになってしまいます。そのため、全面2枚と左右を切り分けて別々に貼ります。

 

 

ウィンドウの枠が太さが一部おかしくなりますが、全体のバランスとしてはまだこちらの方が良いかと思います。

 

 

デカールを貼り終えたらクリアー塗装へ。デカールを重ね貼りしているため、研ぎ出しの際段差を消すためにガッツリ吹いておきます。

 

 

ちなみに胴体下面ですが、突起物が多いこともあってデカールも破れ放題。ここは以前1/144でピーチを作った時に調色した色を筆でタッチアップしておきます。今回は塗装でも仕上げられる(各色調色済みの)状況であえてデカールを使用しているため、このような手段を取ることができますが、本当に塗装ができないがためにデカールを使用している人にとっては難しい問題です。エクストラデカールが付属していれば一番良いですね。

 

 

破れたところは仕方がないとして、ではもし完璧にデカールを貼ることができれば調色して塗装することなく完成させることができるのか?という問いに対しては、答えはNOです。エンジンのボルテックスジェネレータは塗装する必要があるからです。小さい部品なので、まぁここはプラ成形色のままでも目立たないだろう、というハセガワの判断なのかもしれません。似た大きさの部品にノーズギアのカバーがありますが、こちらはキチンとデカールが用意されています。

 

 

光沢クリアー塗りっぱなしでもある程度綺麗にはなります。しかし研ぎ出しをすると光沢に透明感が加わると言いますか、また一段上の仕上がりを得ることができます。このあたりの感覚は同じ飛行機ジャンルの軍用機というよりかは、カーモデルを作る時の感覚に近いのかもしれません。もちろん、軍用機のようにウェザリングマシマシで旅客機を作っても何の問題もありません。

 

 

さて、研ぎ出しも終わりましたら最終組み立てに入ります。もともとこのキットは胴体と主翼のはめあいは結構しっかりしているのですが、胴体塗装中に持ち手代わりにしていたプラ板を翼の差し込み口に何度か入れたり抜いたりしている間にすっかり緩々になってしまいました。そのため自立させた状態で胴体と主翼の上反角を出して固定できるように、主翼に先にランディングギアを取り付けておきました。

 

 

 

完成したら屋外で記念撮影。やはり自然光は良いですね。

 

 

デカールが重なった部分が濃くなってしまうのさえなければ、仕上がりとしてはそこまで悪くないと思います。デカール寸法が足りない、ということもなく、(上から目線ですが)ちゃんと使える代物でした。とはいえ、胴体下面とエンジンはかなりシワができたり破れたりするため、エクストラデカールが欲しいところです(ピーチ限定版第一弾のMARIKOジェットには入っていたはず)。

 

思うように塗装ができない環境の人にとっては、このようにデカールの選択肢が増えることはありがたいことです。実際私も初めてハセガワからピーチのキットがリリースされた時、これ全部塗装せなアカンのか...と絶望した記憶があります。

 

さて塗装とデカールどちらも経験した身からして、結局どちらの方が良いのか?というとやはり塗装だと思います。調色作業やマスキングの複雑さはありますが、その分マスキングテープを剥がしていく時のドキドキ感はプラモの醍醐味だと思います。

 

そこから導き出される初心者でもピーチを手軽に作れるようにすればどうすれば良いか?という問いに対する答えはただ一つ。

ピーチ特色4色セットの発売。

 

というわけでGSIクレオスさん、よろしくお願いします😊