ワタシの父は
釣り好きであった。
というか今もそうである。
海無し長野で育った
ワタシだが
その父のおかげで
海魚の美味しさを知っている。
釣りが好きなので
もちろん
釣ってきた魚を
さばいたりする。
それは見ていて
面白いものであった。
ウロコはポロポロ、
目はウルウル、
ヒレは透き通っている。
飼い猫は
おこぼれが欲しくて
さばく父の背によじ登る。
父は魚のある部分を
まな板の傍らで覗き込むワタシ側に包丁でツイッと寄せた。
波打つように動く
小さな小さな赤い固まり。
これは何 と見上げると
心臓 と父は答えた。
波打ち続けたそれは
5分程かけ徐々に弱り、
止まった。
取り出されても
動き続ける意味 。
幼いながらに
息苦しく思った 。
それでも 止まるまで
目を離せなかった 。
昨日、
バイト先の居酒屋で
手を出して と言われて
出してみると 渡されたのは
魚の心臓であった。
気持ち悪いと感じた直後
手のひらに感じる波打ちに
幼い記憶を思い出して
しばらく
心臓を可愛がってしまった。
手のひらに
まだ波打ちが残っていて
くすぐったい。
お盆の夕暮れは
涼しくて、
人通りもすくないから
いろんな音や会話を聞くようにして歩くのが、楽しくて、ちょっぴり寂しい 。