埼玉県が都内の大学と実施した共同調査の資料が埼玉県庁の資料室にある。
その日は日曜日だった。空はよく晴れていた。その時代、男の子は野球が好きだった。調査の対象となった少年も、日曜日になると、近所の空き地で友達と野球をやっていた。
その少年の家から100メートル以上、離れた場所に野球をやるにはちょうどいい位の空き地があり、その子のチームは攻撃する番で、少年はみんなと並んで座っていた。
その時、少年の家で母親がTVのスイッチを消したのである。すると、タッタッタという足音がした。昔の家なので引き戸になっており、ガラッという音とともに誰かが入ってきた。少年だった。血相を変えて急いでTVのある部屋に行き、TVのスイッチを入れた。画面がつくと少年は安堵の表情となり、再び、100メートル以上離れた空き地へと帰っていった。
昭和の子供は、このくらい、TVが好きだった。