シンシアリー * 心のままに

シンシアリー * 心のままに

何気ない日常です。

私は、ここにいます。

Amebaでブログを始めよう!

その日は、隣町の会館で、経営者向けの

セミナーが開催されていて、若社長は朝から

バタバタと出かけて行った。

昼休み、部長達は、皆で連れ立って

近くのラーメン屋に出かけ、事務所は私、

1人だった。


珈琲を飲みながら、ほっと一息、スマホを

見ていると、事務所の電話がなった。


Nさんからだった。


桜香ちゃん、久しぶりだね。

近くまで来たから、実家の年老いた母から

大量に送られてきた水羊羹を持って行くよ。

桜香ちゃん、水羊羹、大好物だったでしょ!

と。


水羊羹?


水羊羹が好きだと言った記憶が私には、全く

なかったが、あと10分ほどで会社に着くから

と、電話はきれた。


Nさんは、藍色の作務衣姿で現れ、


桜香ちゃん! 少し顔色が良くなったじゃ

ないか!  

約束していた水羊羹だよ!

今年は暑いから、しっかり水羊羹で糖分を

とって頑張るんだよ! お口に合うよう

なら、また持ってきてあげるから!


と、とても良く通る声で、あっという間に

去って行った。


Nさんの行動にいささか不安を覚えつつ、

自宅に帰り、いただいた水羊羹を開けると

そこには、達筆で書かれたメモ用紙が入って

いた。



桜香さんへ


多分、事務所の何処かに

監視カメラが仕掛けられています。

行動、言動は、全て見張られています。

社長とTさんには気をつけるように。

あの人たちは危ないから、逃げなさい。


Nさんは、どこからそんな情報を聞いてきたの

だろう?

もしかしたら、みんなグルなのか、

信じるべきか、どうか、、


次の日から、私は、書類を探すふりや、

掃除をしながら、少しずつカメラを探した。

若社長とも、変わらない日常を心がけた。


若社長のネットでの購入履歴と、小型カメラ

の空き箱を見つけた時、私はいたく

取り乱した。

顔にこそ出さなかったが、心は張り裂けそう

だった。


そうして、ある日、とうとう、ある電化製品

の隙間に、不自然に開けられた穴を見つけて

しまった。


それは、私の席を見下ろす位置に設置されて

いた。


私は、いつのまにか、とんでもなく恐ろしい

世界に足を踏み入れていたのだと気付かされ

た。