あるカジノで俺が実際に見た、妙なもんの話をしようか。
 
 カジノっていってもピンキリで、その日に出向いたのは結構な富裕層が客のほとんどを占めるようなハイソなカジノでな、葉巻くわえたおっさんがきれいなねーちゃんをはべらして、ごろごろ歩いていた。
 
 そいつらに、ひとりだけ様子がおかしい奴がいた。
 
 外見は高そうなスーツにじゃらじゃらアクセサリーつけて、ねーちゃんを周りにつけて、どや顔で歩いているんだが、足下がおかしい。
 
 なにがおかしいって言うのは、俺も幻太郎みてえに語彙が豊富な頭しねえからなぁ……どう言ったらいいかなあ?
 
 足下が、妙にきらきら光っていて、じゃらじゃら音をたててこぼれるものがあるんだよ。けれどおっさんは気づいていないらしくて、どや顔で歩いて、ルーレットのあるテーブルまで行った。
 
 なんだありゃあ、ときらきら光るもんをよく見ると、メダルだった。
 現金と引きかえに、カジノで使うメダルだ。そいつがじゃらじゃら足下にこぼれおちている。普通に考えりゃ、自分でひろうよな?
 
 俺もお人好しな性格だから、「おっさん、メダル落としちゃいけねえよ」って呼びかけようとした。
 
 すると、近くにいた客に「やめとけ」とひきとめられた。
 
「あれはカナダマさ、あんたも触れると運が逃げる。関わらないほうがいい」
 
 なんじゃそりゃと思ったが、カジノは験担ぎは基本中の基本だ、俺も黙って従うことにした。
 
 おっさんは、目の前で身ぐるみはがされ、裏口から追い出されたよ。
 ツキが離れる状態を、目の当たりにしたって話だ。ああこわいこわい。