「・・・・実はママさんから求人広告の掲載費用をまだもらっていないんです。」
苦々しく話すフ〇ムエーの担当者。
「私が求人広告を見たのは三か月以上前なのに、まだ請求してなかったんですか?」
「当社は何度もママさんに連絡をしました。でも支払わないので、連絡をして店に何度も行っています。でもママさんは私達が行く時に隠れてしまうんです」
「予告して行くからではないですか?私の給料はどうなるんですか?」
「ママさんが支払しなければそのままです・・・・・」
「掲載費の未払いの裁判は起こさないのですか?」
「掲載費は5万程なので、裁判費用の方が高くなるので、会社としては裁判はしないんです」
「それは支払わない者勝ちじゃないですか?」
「・・・・・・」
担当者が困っているのはわかった。この担当者が悪いわけでない、悪いのはママだ。
この人を責めても会社の方針なら仕方ない。この担当も対応できる事は全てしてくれた。私が逆の立場でもここまでしかできない。
「じゃあ、何かあれば連絡してください」そう言って電話を切った。
どうせママはフ〇ムエーにも、私にも連絡はしないだろう。
もちろんフ〇ムエーからすら一切連絡もなかった。フ〇ムエーとしては、こんな事がありました、広告費の未回収は貸倒損失に残して終わり。
5万はマイナスだけど、業界的に想定内の出来事だ。
私は三か月モヤモヤし続け、21,000円もらえず終了・・・のはずだった。
その後給与は結局支払われなかったけど、支払われた。
それから1年半程して、私はある夜の店で働いていた。
その店で給与未払い事件の話をしたら、そのママが言った
「働いたのにもらえなかったの?」
「はい、まあ21,000円だからそんなにすごい金額じゃないんですけどね・・・・・フ〇ムエーも労働基準局も何もしてくれないし、仕方ないです」
ママはタバコを吸いながら怪訝そうな顔をしていたが、それ以上は何も言わなかった。
それから三か月程して、その店を辞める事になり、給与を受け取った。
帰りの電車の中で、中身を見たら・・・
あれ?多い?
明細と給与は一致している。でも労働時間が多い。私はこの店は週3で残業もないから間違えてない。
しかも1日4時間だから、間違いようがない。自分でも出勤日や時間を記録している。
そもそもこの店のママは、給与踏み倒しのママと違い、金銭にはものすごくきちんとした人だった。
給与も時給×労働時間-10%でなく、昼の仕事で使う給与計算表から計算していた。
一番低い税率で計算してくれていたと思う。確か3%ぐらい引かれて、昼の給与のように1円単位で給与は出ていた。
そんなママが間違える訳がない。
でも何回数えても、明らかに労働時間が増えている。
そして私が計算したより多い金額は「21,000円」
私が踏み倒された給与の額と一致している。
これは偶然?それともママが私を気の毒に思って代わりに支払ってくれた?
この店のママは、正直性格は悪いが、お金にはとても綺麗な人だった。
給与が遅れた事は一度もない、それどころか小銭が足らなければ、少し多めに入れてくれた。
ママに聞こうかと思ったけど、聞かないまま20年が過ぎた・・・・
もし聞いたとしても、間違えて入れたのだとしても、あのママは返金しろと言う人ではない。
金銭に対してものすごくプライドが高い人だった。
そして偶然にも二人は同じ時代にバブル時代の銀座で夜職をしていた。
年齢は10歳も違うが、片やクラブの№1、片や会社員のアルバイト。
片や小柄だが妖艶な美女、片や高身長だがもっさりとした地味な若いOL。
夜の世界を通り過ぎた今、この二人はどうしているのだろう・・・・
