今し方、プランターの花の手入れをするために外に出ました。
しゃがみ込んで、花殻摘みをしていると、背後から、

パンっ!パンっ!

と乾いた、何かを叩く音がしました。

なんだろうと思って、振り返ると、そこには、あのビーグルちゃんが・・・。
しかも随分見ない間に大きくなっています。
その子が、おそらくおじいちゃんとおぼしき男性に、
お座りをしたそのお尻を何度も何度もたたかれているのでした。

私は、一体なんの粗相をしたんだろうと不思議に思い、
風に乗って聞こえてくるその乾いた音が耳の横を通って行くまま、
あ・・・と、口を開けて見ていました。

見ていると、叩くだけでは気が済まないのか、
手に持っていた何か(紙を折ったもののようでした)を
ビーグルちゃんの眼前にかざし、叩くそぶり。
いやぁ・・・(><)と顔をしかめるビーグルちゃん。

たまらない光景でした。

そこへ、自転車に乗った女の子二人が並びました。
おじいちゃん、ばつが悪くなったのか、
わんこと一緒に、少し移動しました。
移動したそこでも、おりこうさんにお座りしているビーグルちゃんの
お尻をバチン!バチン!叩いています。

端から見ていても、一体、場所を変えたそこで、
何か怒られることをしたんだろうか・・・と理解不能の行動でした。

恐らく、交差点ですから、そこで待っている間におしっこをしたか、
うんちをしたか・・・だとおもうんです。
お尻を叩いていましたから・・・。
でも、その場所・・・、大先輩のわんこさんですら、うんちもおしっこもしてしまう場所なんですよね。
きっと、その臭いで、してしまったんだろうなと思います。

信号が変わって、おじいちゃんは歩き出しました。
そんな出来事があったせいでしょうか、
歩いていく後ろ姿が楽しくないんですよ・・・。
互いに義務的な感じがしてしまう、後ろ姿。
ビーグルちゃん、はずんでないんです・・・いつものように。

しつけのために叩く・・・これ、わからなくないんです。
やっぱり、対人上、命に関わることもありますから。
叩く方も、叩きたくて叩いているのではないこともよくわかります。
だけど、必要以上の「叩き」は犬にとって意味不明なだけかと・・・。

そして、あの乾いた音が、小さな体を叩かれて出た音だと思うと、切ないです。
自分が、のんちゃんを叩いたときのことを思い出し、一層つらさが増す一場面でした。

のん子は、パン!パン!と音がした時点で、
それまで私の作業を見つめたり、外の匂いを嗅いだりと扉から鼻先を出していたのが、奥に引っ込んでしまいました。
彼女なりに何か思うところがあったのでしょうか・・・。

ビーグルちゃん、叩かれるような事をするのも、もう少しの間なのですが、それにしてもつらい音でした。
丁度、高倉健さんのエッセイ集「南極のペンギン」というのを読んでいて、
その中に、アフリカの一少年が砂嵐に巻き込まれ、それがすぎるのをじっと膝を抱えて待っているところに、健さん一行の車が通りかかり、でも助けない・・・ここで生きていくことの厳しさを学び、キケンの回避を学ばなければならない、そして、何より、自分たちは一時の旅人でしかない・・・というお話が載っています。

そうです・・・私はたまたま見かけたよその人でしかないんですよね。
よそのおうちのビーグルちゃんには、そのお宅の方針があるわけですよね。
そうだ、それを忘れちゃいけない・・・と、ビーグルちゃんとそのおうちとの信頼関係のことを考えました。

のん子・・・。
うちはどうだい?
ママ、ちょっとはのん子のいいたいことがわかってきたと思うんだけど。(^^)

高倉 健, 唐仁原 教久
南極のペンギン
これは、文庫本ですが、唐仁原さんの絵がほのぼのと美しいので、できれば、文芸書でお買いになったほうが、ずっと読み応えがあると思います。
健さん・・・教科書に載せたいような、温かく素敵な文章を書く方なのですね。
俳優業とはまた違う一面を見せて頂きました。