2019年日本 片山慎三監督作品
足に障碍を抱えながら、肉体労働に従事ていた良夫はリストラに遭い
家賃も払えず電気も止められ、食うにもままならない生活に陥ってしまった。
彼には知的障害を持つ妹・まりこがいた。
まりこには失踪癖があって、良夫は常々手を焼いていたが
ある時、見知らぬ男に体を許し1万円を得ていたことを切掛に
まりこに買春させて生計を立てることを思いつく。
罪の意識と貧困の間に立たれた良夫。
二人の前に、更なる悲劇が待ち構えていた。
片山慎三は、弱者を描く天才だ。
生暖かいセーフティネットなど機能していない現代社会を
胸糞が悪いほどに観客に見せ付けてくる。
小人症の青年にまりことの結婚を迫った良夫は
「僕なら結婚すると思ったの?」
と言われてしまうのだが、観客も、
彼なら結婚してくれるかもしれない、と浅はかに思ったことを
この監督は完全に見透かしているのだ。
そしてそんな現実がある事から目を反らせることを、決して許さない。
妹がヤクザと交わる様を、檻に監禁され直視さえられた兄と同じ様に。
それはコミカルな演出ではあるけれど、
笑えるが故に残酷さが際立つように思うのだ。
綺麗事を言う気など更々ない、とでも言い切るかのような愚直さに、
完全に惹きつけられてしまった。
最新作「さがす」は強烈なカウンターパンチを持っていたが、
その土台には本作の強烈なメッセージがある事を意識しておいた方が良い。