あいいろ11番地 aiiroj11~愛と幸せに満ちた「あいいろじかん aiiro-jikan」が流れる街~ -2ページ目

あいいろ11番地 aiiroj11~愛と幸せに満ちた「あいいろじかん aiiro-jikan」が流れる街~

とある街の街角。そこには「あいいろじかん aiiro-jikan」という愛に満ちた時間だけが流れているという…。一足先に、ここに気分のお引越しをしてみませんか。街のガイドのあいいろ。がご案しますよ。

 

 

 

同類を嗅ぎ分ける力。

 

 

このブログは、基本的にどこから読んでもよいような作りになっていますが、極簡単に、前回までのあらすじ――日曜日の夜、明日、会社に行きたくない!と叫んだ独り暮らしのOL薫子(カオルコ)さん。彼女の潜在意識に、あいいろ11番地の公認ガイドだと名乗る、あいいろ。という女性の声が聞こえてきて……。

 

☆彡

 

「うわー、『宇宙』とか出てくると、急に『スピリチュアル』っぽくなるなー」

 

と薫子さんが笑い出した。

 

「存じ上げてますよ。薫子さんは、『スピリチュアル』が苦手でしたね。怪しいと思っていて。薫子さんのお友達――宮下真琴さんが言っていました、『あいつは、スピリチュアルとか嫌いだから、あんまり、それについて話さない方がいいぞ』って」

 

「真琴のこと知っているの?」

 

「ええ。薫子さんが大学時代に入っていた英語サークルの1つ年上の先輩でしょう?

彼は、学生時代からちょっと、変わっていたところがありましたよね、ひょうひょうとしているというか、ポジティブで。

いつも遊んでいるようで、いつの間にか大学2年の時に海外の大学に留学したかと思えば、そのまま、アメリカ横断の旅に出て――そして、大学を卒業後は、外資系の会社に入って、順調に営業成績を伸ばし、会社にも貢献しているとか」

 

 

 

 

「ふん、あいつの話なんか聞きたくもないや!」

 

「どうしてですか?」

 

「引きこもりやニートになって……最近やっと、正社員になれたわたしとは、何もかも違い過ぎるじゃん。同じそこそこの大学出たのにさっ。

 

――そもそもね、あいいろ。さん、わたし、英語サークルに入ったのだって、楽そうだからってだけだったの。それなのに、あの暑苦しそうな先輩が、もっとこうしたら、お前も英語好きになるぞーとか、世界は広いだとか、言ってきてさ、

 

その年にそのサークルに入ったの、わたしだけだったし、小さなサークルなので、わたしが辞めたら自然消滅しそうだとかで、ほかの先輩たち4人から、『真琴の言うことは本気にしなくていいよー』って言われていたんだよ」

 

 

「それで、薫子さんはその4人の先輩の忠告にしたがったんですか?」

 

 

「そうよ、悪い?」

 

 

薫子さんは一人でぷりぷりしていた。

 

 

「ああ、そのことですか。実は、わたしは、今、薫子さんに話しかけているみたいに、真琴さんの潜在意識に話していたんですが、その時、真琴さんが、

 

『あいつは、いつも自分の価値を低く見積もる人間の意見を聞き入れるんだ』って言っていました。

 

真琴さんは、こんな話をしてくれました――『あいつにそういうことを言うやって、あいつのことを考えているふりして、本当は自分のことしか考えていないんだ。そのことに、あいつは気づいていない』って。

 

今の薫子さんのお話聞いて理解できました。

 

つまり、そのサークルの先輩たちは、薫子さんのことを思ってと言うよりは、残念ながら、サークルの人数が減ると困る、薫子さんにとどまってほしいから言っているに過ぎないということです」

 

「わたしに居て欲しいんでしょ?その先輩たちの言動の何が悪いのよ!?」

 

「別に悪気があるわけじゃないんです。そ

の先輩たちだって、自覚してそういうことをしているわけじゃないんですが、結果として、薫子さんの可能性の芽を摘んでしまっているというわけなんです。

 

真琴さんとしては、それが、悔しいんですよ」

 

「あいつが何で悔しがるのよ」

 

「真琴さんとしては、薫子さんがもし、サークルをつまらなく感じたら辞めてもいいって思っていたんですよ。

 

そして、薫子さんが、

 

もっと活躍できる場所。のびのびできるところへ行った方がいい

 

って。

 

何なら、自分と同じように海外に行ってもいいんじゃないかって思っていたようです」

 

 

 

 

「海外?英語も苦手だし、コミュ障だし、そんなの、わたしには無理に決まってんじゃん!」

 

「『わたしには無理』――そう、それ。それが、薫子さんの『幻想のモンスター』です。

 

それが、薫子さんの人生を狭めて、困難なものにしていると気づいてください。

 

真琴さんが言う海外っていうのも、別に1つに提案に過ぎないものなんです。なんだっていいんですよ。

 

――でも、真琴さんが言うことに対し、薫子さんは何でもすぐに拒否反応をしてしまう」

 

「あいつに何がわかるっていうのよ!」

 

「真琴さんは薫子さんの人生のある一時期にちょっと関わっただけかもしれません。でも、真琴さんには鋭い嗅覚がある

 

――仲間の匂いを嗅ぎ分ける嗅覚が

 

「嗅覚?」

 

「そうです。真琴さんだって、別に誰に対しても『悔しい』なんて感じないですよ。ただ、自分と同類で、仲間になれるかもしれないのに、何だか周囲の人間にいいように言い聞かされて、利用されて、自分を低く見積もり、搾取までもされている――そんな人間を放っておけないんですよ。――そういうわけで、薫子さん、これが最後のチャンスなんです」

 

「何よ、急に最後のとかって、切羽詰まって」

 

「実は、わたしに薫子さんを、あいいろ11番地に引っ越すように説得してくれと頼んだのは、真琴さんなんです」

 

「はあ?――あっ!思い出した!魂だの、宇宙だのの話の前に、あいいろ。さん、何か言ってたじゃん、真琴のこと――」

 

「真琴さんが、あいいろ11番地に引っ越ししようとしているっていうことですか?」

 

「そう、それ!」

 

と薫子さんが叫んだ。

 

☆彡

 

 

 

(公認ガイド あいいろ。)