恒例の今年のお仕事1である。
 今年は世の中の様子が大きく変わったことと、個人的にも生活が変わったことで、4月を境にかなり変化した。もっとも、論文等は、すでに前年度に書いていたものが刊行されたのが多いが、4月以降に新規依頼をうけたものもある。
 さて、今年の新論文は2本だけ。「初期寺院の創建」は、飛鳥・藤原の世界遺産の検討に関わって、古代寺院の創建意義と、前身寺院の問題を考察したもの。寺院の創建理由は、仏教興隆ということもあるが、政治・政策と密接に関わることが判明した。また、飛鳥寺前後の「寺」として、瓦を葺かないものがあることも判明。ただし、伽藍整備されるより古い瓦を出土する寺院については、当初仏堂だけの寺が、後に伽藍整備をすることがあることを明示し、いくつかのモデルケースを提示した。この続編として、国家寺院の誕生についても計画しているが、次年度はその前提となる高市大寺の位置については投稿済である。「王都『藤原京』からみた大宰府都城の成立」は、昨年の大宰府論文に続く第二弾。大宰府Ⅰ期新段階の政庁と条坊を、藤原新城と比較したもの。政庁は、国府政庁に近いことがわかり、条坊は区画規模は異なるものの、藤原新城の半分の面積であることを指摘した。
 報告書は、飛鳥寺西方遺跡の正報告書のほんの一部について執筆した。飛鳥寺西については、個人的な検討をすでに行っているが、その後の発掘調査でも、その内容は大きくは変化していない。
 図録は、毎年恒例の飛鳥資料館て行っている『飛鳥の考古学』の序文文章を書く。企画を立ち上げ、十数年続いているが、私の出番は立場上、今回が最後となる。
 この他に、明日香村の学校副読本である『美しあすか』では、12月になって、突如執筆依頼がきて、正月休みにバタバタと書いたもの。また、元興寺シンポの内容を書籍化した『日本仏教はじまりの寺』に「飛鳥寺の創建」を執筆した(最近は寺院研究に勤しんでいる)。また、『日本書紀』1300年にからんで、毎日新聞の依頼で「ぶんかのミカタ」で、飛鳥の遺跡と日本書紀の関連について記した。また、『月刊ならら』を隔月で連載することになり、キトラ壁画と大嘗祭の2回分を書く。
 メルマガ連載の「飛鳥・藤原の考古学」は、天智朝が6から8まで。そろそろ天智朝も完結しなければいけないが。そのためには滋賀県に現地調査をしなければいけない。旬は、今年前半はコロナの関係で、前半の現場がほとんど中止、そのしわ寄せは秋から年末年始に集中した。苑池・藤原宮・中尾山は、ほぼ毎回のように旬があり、さらにそれは年明けまで続く模様。

(論文)
・「初期寺院の創建-7世紀前半における仏教寺院の創建-」『明日香村文化財調査研究紀要 第19号』
・「王都『藤原京』からみた大宰府都城の成立-筑紫新城と藤原新城-」『難波宮と古代都城』
(報告書)
・『飛鳥寺西方遺跡発掘調査報告書』(共著)
(図録)
・『飛鳥の考古学2019』(共著)
(その他)
・「飛鳥時代に活躍した人々」『美しあすか』
・「飛鳥寺(法興寺)の創建」『日本仏教はじまりの寺』
・「ふたつの『新城』を探る-藤原京と大宰府-」『明日香 明日香村文化協会会誌 第42号』
・「飛鳥学冠位叙任試験より 座談会(上中下)」『読売新聞朝刊 2020年4月8~10日』
・「ぶんかのミカタ 『日本書紀』は語る㊤」『毎日新聞夕刊 2020年10月24日版』
・「飛鳥の遺跡を学ぶ① キトラ古墳壁画を読み解く」『月刊大和路 ならら264号』
・「飛鳥の遺跡を学ぶ② 飛鳥に大嘗祭の源流を探る」『月刊大和路 ならら266号』
・「飛鳥・藤原の考古学 天智朝の王宮と国際情勢 その6~8」(飛鳥遊歩マガジン)
・「飛鳥・藤原の考古学 狂心渠を再検討する」(飛鳥遊歩マガジン)
・「飛鳥・藤原の考古学 大安寺前身寺院と狂心渠」(飛鳥遊歩マガジン)
・「飛鳥・藤原の考古学 飛鳥寺跡出土風鐸からみる建築様式」(飛鳥遊歩マガジン)
・「飛鳥・藤原の考古学 飛鳥京跡苑池の実像」(飛鳥遊歩マガジン)
・「飛鳥・藤原の考古学 藤原宮と難波宮を比較する」(飛鳥遊歩マガジン)
・「飛鳥・藤原の考古学 古墳から仏塔(ストゥーパ)へ」(飛鳥遊歩マガジン)