今月のはじめ、大阪の書店で上記の本を入手した。橋本義則氏の第3論集である。刊行されてから、探していたが、ようやく手に入れた。内容は、これまでの論考をまとめたものであるが、半分ほどは読んでいなかったものなので、ためになる。
橋本義則著 『日本古代宮都史の研究』 青史出版 2018.10刊行
前半の第一部は、宮都に関するもので、藤原・平城・恭仁・紫香楽・平安宮に関する10編を掲載している。橋本さんの興味の対象は平安宮にあり、そこに繋がる平城宮内裏の変遷を解明した。今回の図書でも再度平城宮内裏の論考を再録している。これは橋本研究の基本であり、この論考内のでの指摘事項も解決していない点があるからという。これを、若い宮都研究者への問題提起とするため、という。また、これを踏まえて恭仁宮のふたつの内裏や紫香楽宮、そして平安宮・京の論考を書いている。他にも、取り上げなかった宮都についても構想はあるようだが、これらを構成することによって「古代宮都史」が完結するのだろう。
第二部は、宮都と葬地に関する3編を掲載する。橋本さんは最近、科研で都城と葬地についてもテーマとしており、先日も、シンポジウムを行っていた。私も二日目だけ参加したが、残念ながら体調不良ということで、橋本さんとは会うことはできなかった。ちょうど私も「藤原京と古墳」について興味があり、シンポの内容とも重なる論文を書いていたところであった。第一部と第二部のバランスが悪いのは、葬地に関する論考を、もう数本書いて、一冊にする予定だったと、あとがきに記されている。諸般の事情で、叶わなかったと記す。
橋本さんとは、奈良文化財研究所時代に同じ現場班だったが、山口に行かれてからは、年賀状でのおつきあいになってしまった。そこには、「東アジア都城も見るように」と書かれている。今後は私も視野を広げなければならない。ひとつ残念なのは、2年前にだした『古代飛鳥の都市構造』についての感想をもらえなかったこと。きっと、辛口評価なんだろうなぁ、と思いつつ……。