「小治田宮の井戸-井戸枠の年輪年代と出土土器-」
『明日香村文化財調査研究紀要 第2号』(2001年)
明日香村教育委員会
雷丘東方遺跡から出土した「小治田宮」墨書土器の年代的な検討と遺跡の性格については、すでに「小治田宮の土器」として記していた。その後、井戸枠材の保存処理を契機として、年輪年代の測定を試みた結果、井戸枠は758年+α年に伐採された材であることが判明し、井戸底の石敷直上出土墨書土器とは20~30年の差がみられる。このことから、井戸は760年頃に伐採された材で造られ、しばらくは適切に管理・運用されていたが、780~790年頃に墨書土器を投棄したと考えられた。さらに760年という年代は、淳仁天皇が小治田宮に行幸した年であり、まさに、この井戸は淳仁天皇行幸のために作られた井戸であることが判明した。いずれにしても、発掘調査から15年程が経過しているが、最新の年代測定によって、新たな成果が導かれた事例でもある。