「飛鳥地域における空間利用形態についての一試論-掘立柱建物の統計的分析を通じて-」
『明日香村文化財調査研究紀要 創刊号』(2000年)
明日香村教育委員会
 
飛鳥地域における宅地について検討したもので、『明日香村文化財調査研究紀要』の創刊を語る巻頭論文である。飛鳥地域では、これまで断片的ながら掘立柱建物が見つかっている。しかし、その確認状況は、建物数棟であることは希で、多くは建物の一部である。しかし、藤原京以降の都城において、大規模宅地や小規模宅地が確認されており、大規模宅地の建物は、規模や柱間、掘形等が概して大きく、小規模宅地においては、小さいという傾向がみられる。そこで、藤原京の宅地以降の属性を統計的に扱い、この点を検証した。これを踏まえ、飛鳥地域の宅地の掘立柱遺構を分析したものである。その結果、大勢的には、盆地中心部に近い所に大規模宅地があり、縁辺部にいくほど小規模になるという傾向がみられた。ただし、例外的な事例も多いことは、それまでの豪族・皇族の居住地を反映していると考えられた。いずれにしても、飛鳥地域の宅地を中心とした都市景観の一端を階層別に論じたものとしては、数少ない論考であろう。