上野誠著「天智天皇挽歌群と後宮」の抜刷ほか多数を頂いた。ありがとうございます。
この論攷は、『万葉挽歌のこころ』の天智挽歌群についての補論でもある。この挽歌群を「後宮の文学」とされているが、著者は「大后と宮人の文学」と定義づけている。これを理解するために、天智朝の後宮についての形成・施設・組織についている。万葉学者ではあるが、歴史学・考古学的手法によって、これらを検討し、上記の挽歌群理解のための基礎としている。
天智天皇、すなわち中大兄皇子は、飛鳥時代の人物の中でも、その位置づけが分かれている。中大兄皇子は舒明朝から現れ、乙巳の変、大化の改新、斉明朝、そして天智朝と活躍する人物である。この4代(本人を含めて)に活躍する人物は、他にはほとんどみられない。しかもかなりの重要人物である。現在の飛鳥時代史においては、彼の位置づけによって、歴史観が大きく変わるのである。まさにキーパーソンだと思う。その天智の理解の一つとして、上野氏のような万葉歌の検討も必要となる。