奈良文化財研究所の講演会集である『古代はいま-よみがえる平城京-』を読んだ。奈良文化財研究所の偉いさんたちが総出演である。内容はそれぞれの専門を熱く語るものである。田辺所長は平城京研究の歴史と保存を解説し、井上副所長は平城京遷都の理由を飛鳥から紐解いて手堅く語っている。島田建造物室長は大極殿の復元について、研究から復原までをわかりやすく示している。小野文化遺産部長は古代から近代までの庭園の歴史を、馬場研究員は木簡を親しみやすい口調で語っている。深沢部長は趣向を変えて、染め物について説明し、難波企画調整部長は花器として再利用された銅鐸を紹介している。そして、松井氏は動物考古学を解説する。最後に、佐藤信氏が奈良文化財研究所の意義と今後に期待することを語っている。
 このように奈良文化財研究所のこれまでの研究や調査をわかりやすく紹介し、それは飛鳥藤原・平城京の発掘だけでなく、多彩な分野に及ぶことを改めて認識させるものであった。ぜひ一読を……。
 
奈良文化財研究所編 『古代はいま-よみがえる平城京-』 クバプロ 2011.12刊行
 ・田辺征夫 「平城宮跡のむかしと今」
 ・井上和人 「古代遷都の真実」
 ・島田敏男 「大極殿復原」
 ・小野健吉 「日本庭園のはじまり」
 ・馬場 基  「木簡が語る平城京の時代」
 ・深澤芳樹 「くれないはうつろうものぞ」
 ・難波洋三 「銅鐸、花器として生きる」
 ・松井 章 「古代人の肉食の忌避という虚構」
 ・佐藤 信 「古代史研究と奈良文化財研究所」
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