山田邦和著の『日本中世の首都と王権市』を読んだ。山田氏の第三論文集である。これまで古代都市についてはいろいろと読んだが、平安時代以降の都市については不明な点が多い。そんな中、山田氏の平安以降の京都と、その周辺の嵯峨、そして清盛で話題の福原京の都市論はおもしろい。古代都市の延長として中世の都市構造を考えるのは重要なことだと思う。本書でも平安京(京)の周辺の都市空間や福原の京について考察している。律令都城から中世都市への変化を表している。この中の何本かの論考は、初稿で読んだことがあるが、ここまで体系的にまとまっていると理解がしやすい。ここから改めて律令都城も理解できる。一読はしたが、もっと内容を読み込む必要がある。
 なお、著者はたたいま療養中のようである。はやく元気になって、またどんどん論考を展開してもらいたいものである。
 
山田邦和『日本中世の首都と王権都市-京都・嵯峨・福原-』文理閣2012.3刊行
 ・第一章 平安京・京都の都市と都市民
   第一節 平安京の空間構造
   第二節 平安京の信仰と伝説
   第三節 鴨川の治水神
   第四節 中世京都の被差別民空間
 ・第二章 院政期京都とその周辺
   第一節 白川・鳥羽と平安京の平家邸宅
   第二節 六波羅・法住寺殿の復元
   第三節 西八条第の考古学的検討
 ・第三章 「福原京」の復元研究
   第一節 「福原京」に関する都城史的考察
   第二節 福原遷都の混迷と挫折
   第三節 「福原京」の都市構造
 ・第四章 中世都市嵯峨の変遷
   第一節 「都市」としての中央大寺院
   第二節 院政王権都市嵯峨の成立と展開
   第三節 寺院境内都市嵯峨の変遷
 ・第五章 京都の歴史遺産とその活用
   第一節 埋蔵文化財をめぐる社会システムの混迷
   第二節 遺跡保存と活用の論理
   第三節 京都都市遺跡の調査と保存
   第四節 京都・歴史遺産の活用と世界遺産
   第五節 史跡顕彰の実践