奈良文化財研究所が藤原宮朝堂院の調査成果を発表した。この夏に大嘗宮らしき遺構の一部が見つかったとされる場所である。それらの遺構が大嘗宮と確認出来れば、非常に大きな成果であったといえる。しかし、当時はまだ、礫敷を残した状態で、さらに続く下層の調査で確定していきたいというものであったと思う。
しかし、今回のニュースをネットで見ていると、「遺構を誤認」「捏造だ」とか、いろいろいわれている。確かに日本の考古学の最高峰に位置する研究所であるので、その影響は大きいとは思うが、考古学とは、検出遺構を基に仮説を立て、その仮説を現場で検証しながら、事実に即した歴史像を作り上げていくのである。そのためには多くの人々の共同作業として発掘調査があるのである。今回、その検証作業において、先の仮説が成立しないことを確定したのである。
この調査で問題があったとすれば、中間報告で、まだ確定していない大嘗宮を強調しすぎた点であろう。しかし、今回の発表についての報道をみてみると、もっとも気になる点がある。いずれも大嘗宮はなかったとする記事ばかりで、今回の下層調査での成果が記事になっていないのである。運河や溝など、藤原宮造営にかかわる遺構群が確認されており、これらの成果や意義について、報道することも当然必要であろう。
いずれにしても、いろいろなことを考えさせる調査であった。