先日、『古代都城のかたち』なる本を頂いた。奈良女子大学のCOEプログラム「古代日本形成の特質解明の研究教育拠点」の成果の一部である。これまでもいくつものテーマに沿って、報告集が刊行されてきたが、一般図書で発売されるのははじめてだ。上記の内容に沿うと、大極殿や都城の構造などのテーマがあるが、今回は「都城のかたち」にこだわって、日本の都城や地方都市、さらには中国の都城形態や理念について検討している。後半部分は、なかなか難しい論考もあるが、この中でも「平安京の空間構造」「古代地方都市のかたち」はおもしろい。前者は平安京は条坊部分だけでなく、その周辺部を含めて、形成されていることを明確にしている。一方、後者では多賀城や斎宮、平泉、武蔵の国府の構造に着目し、方画地割りの有無や意味を説いている。ご一読してみてはいかがであろうか。

 舘野和己編 『古代都城のかたち』 同成社(2009.6)
  ・古代都城の成立過程(舘野和己)
  ・京の成立過程と条坊制(吉野秋二)
  ・平安京の空間構造(山田邦和)
  ・古代地方都市のかたち(前川佳代)
  ・大寺制の成立と都城(竹内亮)
  ・中国における都城の理念と東アジア(佐原康夫)
  ・中国古代都城の形態と機能(齊東方)
  ・中国都城の沿革と中国都市図の変遷(妹尾達彦)
  ・中国古代都城の園林配置に関する基礎的考察(北田裕行)