『文化遺産と現代』という本がでた。
 これは専修大学の研究会で3年間の成果報告書でもある。日頃、文化財を扱う人々と社会学を扱う人々が、文化財の保存と活用についての討論である。まさに文化財学と社会学の文化遺産をめぐる異種格闘技である。3年間の中では、群馬県高崎市の保渡田古墳群や栃木県足利市の足利氏関連遺跡、福井県若狭町の熊川宿や上中古墳群、奈良県橿原市の今井町と明日香村の遺跡群などを視察。それぞれの現状や課題についての報告と課題について語り合った。
 今回、この研究会に参加して、改めて文化財の保存と活用について考えるきっかけとなり、また、他地域の実態を知るだけでなく、まったく分野の異なる社会学の人々の考え方にも触れることができた。この本の中でも書いたが、決して他の事例や考え方が、そのまま自分の地域にストレートに採用できるものではないが、参考になる点は多い。未だ、結論のでない大きな課題ではあるが、少なくともこれからも自問しながらいこうと思う。そのキーワードは「遺跡」「景観」「住民」である。この三つの円の重なる所に答えがあるが、なかなか円が重ならない。もしかしたら、この重なる部分に「世界遺産」があるのかもしれない……。


土生田純之編 『文化遺産と現代』 同成社(2009.6)

 第1部 現代社会における文化遺産への視点
  第1章 「現在」を保存する社会(荻野)
  第2章 平和資料館の形成と社会運動(嶋根)
  第3章 歴史遺産の活用と復元(青木)
  第4章 浜松市伊場遺跡と地域史研究(荒木)
  第5章 遺跡化の論理(山)
  第6章 文化遺産の活用に向けて(土生田)
 第2部 文化遺産保存と活用のケーススタディ
  第1章 群馬県高崎市保渡田古墳群(若狭)
  第2章 栃木県足利市中世足利氏関連史跡(市橋)
  第3章 福井県若狭町熊川宿(永江)
  第4章 福井県若狭町鳥浜貝塚と上中古墳群(入江)
  第5章 奈良県明日香村(相原)
  第6章 奈良県橿原市今井町(竹田)
 第3部 座談会 文化遺産と現代