「部屋に入ったとたん、もう、絶句しました…。アパートの6畳一間に、ぎっしり猫がいたんです」
⇒【写真】押し入れに猫がぎっしり…
そう振り返るのは、猫ボランティア団体「かつしかわんにゃんくらぶ」の代表、佐藤千鶴子さんです。数えてみたら、なんと163匹! 史上最大級の多頭崩壊(ペットに不妊手術をしなかったために異常繁殖して飼育不能になること)です。
今年7月に東京都内某所で発覚したこの多頭崩壊。必死の救出にも限度があり、今もまだ101匹が部屋に残っているのです(10月18日現在)。
警察の介入でやっと部屋に入って…絶句
最初に異常に気づいたのは、「かつしかわんにゃんくらぶ」のA子さんでした。
「今年6月、猫の声が聞こえて、普通の数ではないとすぐわかりました。私とボランティアさんと保健所の人で訪ねたら、40代らしき女性が出てきて『猫は6匹しかいない』と。部屋には入れてもらえませんでした。
それから1ケ月ほどして、通行人が『異臭がひどい、人の死体があるのではないか』と警察に通報したんです。それで警察と一緒に部屋に入ってみたら…言葉もありませんでした! 猫で床が見えなかったですから」
エアコンもない締め切った6畳間で、ハァハァいっている熱中症の猫や、ケガをした猫もいました。トイレはたった2つで、新聞紙がトイレ替わり。子猫・乳のみ児も25頭いました。
この部屋に住む飼い主は病気で働けず、不妊手術をするお金がない。7年前に妊婦猫を1匹保護し、いつの間にか増えていたと言っていたそうです。
「みんな汗だくでしたね。まず乳のみ児15匹を緊急保護しました。ミルクボランティアさんが寝る間も惜しんで育ててくれましたが、“半分ひからびた状態”だった子もいて、7匹が星になってしまいました。でも8匹は無事大きくなっています。
成猫のほうは、週3回通って毎回10匹ペースで医者に連れて行き、不妊手術をしてもらって…合計116匹を手術しましたね。ワクチンとウイルスチェックも全頭やりました。
人馴れしていないので、私たちが行くと押し入れにギュウ詰めに隠れちゃって大変です。
飼い主が『窓を開けたくない』というので、エアコンも付けたんです」
不妊手術など医療費だけでなんと139万7949円。これは支援者からの寄付・約72万円と、区からの手術助成金・約76万円でまかなえたものの、今後も餌代や医療費がいくらかかるかわかりません。
他団体の協力もありました。「たんぽぽの里」(神奈川県)が成猫21匹を、「どうぶつの福祉を考える会」(東京)が子猫を引き取ってくれ、里親募集中の猫もいます(各団体のHP参照)。また、「猫部はなはた」も多大な協力をしてくれたそう。

付や里親になりたい人を募集中
前出のA子さんも、自宅に4匹連れ帰ったそうです。

付や里親になりたい人を募集中
前出のA子さんも、自宅に4匹連れ帰ったそうです。
「うちには既に15匹の保護猫がいたので、19匹になっちゃいました。保護した4匹のうち2匹はケガがひどくて。他の猫に背中を噛まれて、傷口にひどく膿が溜まってしまって、病院で治療しました。
あとの2匹は里親募集中ですが、日本では子猫が人気だから、成猫はなかなか里親が見つからないんですよね…。
この子たちの里親が決まったら、次の子を引き出そうと思っていますが、どれだけ時間がかかるのか――途方に暮れます」(Aさん)
トラウマを抱えた猫を大切に世話して、人間への信頼感を持ってもらってから、里親を見つけるには、数ケ月~数年かかるのです。
では、今も部屋に残された101匹は、どうなるのでしょうか?
「他の団体も、これ以上、預かれる余力がないんです。これからは私たちが定期的に通って、部屋を清潔にして、餌代も支援していくことにしました。1日で餌10キロぐらいなくなるんですけどね…。
そして1匹でも多く、里親に出す努力をしていきます」
「全く先が見えない」という中で、奮闘するボランティアの人たち。そして、つらい環境に置かれた猫たち。
もしこの記事を読んで、寄付金や支援物資(カリカリ餌など)を送りたい、里親になりたい、預かりボランティアをしたい等と思ったら、「かつしかわんにゃんくらぶ」や前述の団体のHPを参照してください(支援物資は不要な物を送ると迷惑がかかるので、各団体の欲しいものリストを参照するか、寄付金が無難です)。
※「かつしかわんにゃんくらぶ」への寄付:亀有信用金庫 青戸支店
普通口座 1173623 佐藤千鶴子(サトウ チヅコ)
※支援物資の送り先:(ヤマトでお願いします)
〒125-0032 東京都葛飾区水元2-18-20 ヤマト運輸水元センター
「今回、もし多頭崩壊の場所を明かしたら、飼い主へのバッシングが起きるし、退去命令が出て猫たちが愛護センター行きになって、どうなってしまうかわかりません。それだけは避けたいのです」
ひどい飼い主だと叩くのは簡単ですが、彼女なりに掃除や餌やりなどやっていたそう。なにより、猫と飼い主を守ろうというボランティアの人たちの心意気に胸を打たれます。
ただ、最後に佐藤さんはこう断言していました。
「多頭崩壊の多くは、お金がなくて不妊手術を受けさせないのが原因です。1万~2万円の手術代が出せないなら、飼わないでほしいです」