「ガチの便所メシです。非正規はこんなにも悲惨なのかと……」  都内の大手放送局に勤務する酒井大和さん(仮名・30代)は、制作会社から局に派遣されている非正規テレビ局員だ。  正規と非正規の間で広がる格差が叫ばれるようになって久しいが、それは憩いの時間であるはずのランチタイムにも現れつつある。実は酒井さんのように、便所や非常階段などで食事を済ます非正規もいるという。果たして、その実情とは?  酒井さんの年収は410万円ほどだが、一昨年には埼玉県某市に一軒家を購入し、小学生の娘二人とパートタイマーの妻を食わせるために必死に働いている。ちなみに、同局の正社員は30代で1000万円を超えるという。 「昼飯時になると、社員たちは1000円はする出前を頼んだり、会社近くでランチをしたり……。私もたまに付き合うのですが、基本的には妻手製の弁当なんです」  出費も増えるし、弁当持参で少しでも節約を、というのは非正規社員にとっては当然だろう。しかし、ここに非正規社員の悲哀があった。 「社員の若い女性、非正規のお局女性社員から“愛妻弁当”だと冷やかされるのです。それだけならいいのですが、中身にまでケチをつけられる。冷凍食品が多いと『愛されてるんですか?』とか、色どりが悪いと『昔の弁当みたい』とか。私もいい大人ですから怒りませんが、愛妻弁当にああだこうだ言われて、本当に悲しくなるのです」  そんなわけで、いじめられっ子よろしく「便所メシ」をするようになったという酒井さん。自身も働いている妻が旦那のためにと持たせてくれる愛妻弁当に文句を言われたら、夫としてはたまったものではない。ハラスメントに近い行為ではあるが「言う側」にその自覚が全くない。同じような例は他にも……。

トイレ

昼休憩の時間に埋まる便所。もしかすると、非正規スタッフが中で泣いているのかも… 「さすがに便所では飯を食えないので、非常階段とか地下駐車場で食べてますね」  こう話すのは、都内の大手広告会社の非正規社員・丸田成人さん(仮名・20代)。前出の酒井さん同様、若くして世帯持ちであり、自宅の購入資金を捻出するために、日々節約を強いられていると言うが……。 「弁当を持ってくると『貧乏くさい』と特に女性の正社員から笑われます。正社員が弁当を持参していれば『えらい』とか『奥さんに愛されている』と言われるのに、です。これは差別ですよ。社員がコンビニのサラダチキンを食べていれば『体に気を使っている』となるのに、非正規の我々がチキンをかじっていると『かわいそう』と……。  同じ境遇のはずの非正規女子社員も、そうした嫌味をいってくる。お前らに何がわかるのか、と言い返したくもなりますが、そういうのもバカらしいので。非常階段で愛妻弁当を食べていたら、同じような境遇の非正規社員の数人と知り合いになれて、わりかし楽しいランチタイムを過ごせていますが……」  食い物のレベルで笑われて、節約しようとすればそれでまた笑われ、バカにされる。非正規社員が感じる悲哀の一コマなのかもしれないが、こうして改めて振り返ってみると、こんなに陰湿なことはない。