あなたは自分が70歳まで働く姿を想像できるだろうか? 人生100年時代といわれる今、もはや悠々自適な引退生活など、遠い過去のものになった。
定年も年金も先延ばしに。きみたちはどう働くか?
「定年退職以降も働き続けないのは、この高齢化社会においてデメリットが多すぎる」と話すのは、ファイナンシャル・プランナーの野口俊晴氏だ。
「今後は年金受給開始が70歳になることが濃厚で、それまでは働くことが前提になってきます。これまでは60歳定年で、平均寿命が男女でならすと85歳くらいと考えれば、退職後の25年間は退職金や年金で生活するのが前提でした。しかし、人生100年時代になると、60~85歳の25年間用に予定していた資金を75歳以降の25年間に持っていかなくてはいけなくなる。だから70歳はおろか、75歳まで働き続けるかどうかが、ひとつのメドになってくると思います」
では、現在の60代はどのような働き方をしているのか。SPA!が60代で働く男性200人を対象に調べた結果では、現在の働き方は「定年前の会社で雇用延長で働いている」という人が半数近くになった。
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Q.今の働き方を以下から選んでください
Q.今の働き方を以下から選んでください
・定年前の会社で雇用延長 43.5%
・自営業/経営を継続中 26.5%
・定年を機に転職 15.5%
・定年後にアルバイト 8.5%
・定年を機に起業 3.5% =================
・自営業/経営を継続中 26.5%
・定年を機に転職 15.5%
・定年後にアルバイト 8.5%
・定年を機に起業 3.5%
・その他 2.5%
また、60代以上でも働いている理由では、「生活費が足りないから」という回答が最多で、ほかに「社会との関わりを持ちたい」「働かないとボケそう」という人が多い。
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Q.60歳以上になっても働いている理由は?(複数回答・人)
Q.60歳以上になっても働いている理由は?(複数回答・人)
・生活費が足りないから 109
・社会との関わりを持ちたいから 74
・働かないとボケそうだから 68
・家族に楽をさせたいから 42
・周りから求められるから 39
・もはや死ぬまで働くのが当然だから 35 =================
・社会との関わりを持ちたいから 74
・働かないとボケそうだから 68
・家族に楽をさせたいから 42
・周りから求められるから 39
・もはや死ぬまで働くのが当然だから 35
・仕事以外に楽しみがないから 12
「雇用延長が多い理由は、60歳をすぎて自分がいた会社の外に出て働くことが難しくなるためです。60~70歳以降も働きたいと思いハローワークに行ったとしても、希望に沿う仕事はほぼありませんから。現在は増えるシルバー人材に対して、社会の対応がまったく追いついていません」
70歳以降のキャリアプランを尋ねた結果でも、やはり「可能な限り今の仕事を続けたい」という声が約半数なのも納得だ。
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Q.自分の「70歳以後のキャリア」をどうしたいですか?
Q.自分の「70歳以後のキャリア」をどうしたいですか?
・可能な限り今の仕事を続けたい 40.5%
・さすがに仕事はやめている 26.5%
・社会貢献に繋がる仕事をしていたい 17.0%
・別のやりたい仕事を見つける 13.0%
・もっと収入を増やしたい 11.5% =================
Q.70歳まで働くうえで重要なものはなんですか?(複数回答・人)
・さすがに仕事はやめている 26.5%
・社会貢献に繋がる仕事をしていたい 17.0%
・別のやりたい仕事を見つける 13.0%
・もっと収入を増やしたい 11.5%
・未知のジャンルに挑戦していたい 8.5%
Q.70歳まで働くうえで重要なものはなんですか?(複数回答・人)
・働き続ける体力 175
・身の丈に合った職選び 72
・スキルや知識を学ぶ姿勢 71
・50代までに培った経験 52
・若い人とのコミュニケーション力 48
・世間の変化を摑む情報収集力 43
・キャリアを捨てられる勇気 33
・仕事以外での人脈 29
・身の丈に合った職選び 72
・スキルや知識を学ぶ姿勢 71
・50代までに培った経験 52
・若い人とのコミュニケーション力 48
・世間の変化を摑む情報収集力 43
・キャリアを捨てられる勇気 33
・仕事以外での人脈 29
定年間際から“その後”を考えるのは遅すぎる
そんな現実を前に、今の40~50代はどのような準備が必要なのか。
「定年間際になってからこの先どうしようと考えるのは遅すぎる」と話すのは、「人生100年時代」の生き方・働き方のサポートを行う「ライフシフト・ジャパン」代表の大野誠一氏だ。
「定年まで“会社の人生”を歩んできて『さぁこれからは“自分の人生”を生きよう』とは簡単に切り替えられません。40歳くらいから自分がやりたいことにフォーカスして動き始める必要があるでしょう。社内だけの人付き合いだと新しい発見や出会いのバリエーションは必然的に少なくなります。
だから会社とは別のコミュニティにも属し、多様な働き方をしている人に触れてさまざまな気づきを得るといった経験が大切になります」
大野氏は、50代半ばにさしかかり「もうこれ以上の出世はムリだな」「残りの会社員人生で得られる生涯賃金はこれくらいか」「会社は何歳まで雇用延長してくれるんだろう」と、無気力になってしまう人がとても多いと指摘する。
「『人生100年時代』という言葉の印象について聞くと、『人生が長くなってワクワクする』と感じる人は3割くらいで、7割方は『しんどい』とネガティブな感情を抱いています。
雇用延長は一つの選択肢ですが、今の40~50代の人はそんな先輩たちの働き方や生き方を参考にするだけでなく、自分が新しいロールモデルをつくるというくらいの意気込みを持ってほしい。
今は5年先だって見えない時代。遠い目標を決めて、その目標に向かって進むという生き方ではなく、変化し続ける状況に柔軟に対応する、『変化を楽しむ』というマインドセットが大切です」
定年が70歳になる未来はもうすぐそこ?
では、現在も元気に働けている60代たちは「70歳まで働くために大切なこと」をどう実感しているのか。その回答としてほぼ全員が「働き続ける体力」と答えたように、体が資本なのは言わずもがなだが、それ以外に「スキルや知識を学ぶ姿勢」や「身の丈に合った職選び」との声も多い。
また、大野氏によれば、今後は定年自体がどんどん延長されていくと予想されるという。
「30年後、今40歳の人が70歳になる頃には、少なくとも定年は70歳になっているでしょう。
ただ、個人的には定年という考え方自体がなくなってもいいと思います。これから10年かけて65歳定年が完成して、その先10年かけて75歳定年になっても、またその先10年かけて……と問題はずっと続きます。
だから、『定年が延びれば働き続けられる』と安心するのではなく、『自分の定年は自分で決める』という気概を持ってほしい。40代なら学ぶ力もまだあるので、できるだけ早く動きだしたほうがいい」
そんな我々が現在の働くシルバー世代の姿を見て、将来の自分のために取り入れるべき教訓を考えてほしい。