腕時計投資家の斉藤由貴生です。私は、現代のおかしな消費を変えるために実践を重ねながら、いろいろ研究してきました。私は30代のいわゆるバブルを全く知らない世代です。所有欲の薄い世代とは言われますが、私の場合は、むしろ価値あるものは我慢せず所有したいと考えています。そんな私の価値観を、不定期ですがご披露したいと思います。
同じ給料なのに、なぜあいつのほうが贅沢できるの?
もしかすると、あなた自身も「100万円のロレックスが欲しい」「いつかはBMWに乗りたい」と、漠然と思ったことがあるかもしれません。ただ、本当に考えて消費をしている人は、所得にかかわらず欲しいモノをきちんと手に入れているのです。
では具体的にどうしているのでしょう。次の事例を紹介します。
AさんとBさんは、29歳の独身で、月収は手取り23万円。全く同じ条件の男性です。そしてボーナスの手取りも同じく80万円。収入に差はないので普通に考えれば同じような生活になるはず。しかし、その暮らしぶりにかなりの差があるのです。それでは比べてみましょう。
贅沢はしていないけど知らず知らずのうちに浪費しているAさん
Aさんは大学から東京に出てきて、その時借りた中央線沿いのワンルームのアパートに今も住み続けています。もう10年以上もの間住んでいるアパートは、今更住み替えるのも面倒くさく、そんなに不便を感じているわけでもありません。そんなわけで、部屋の中も学生時代からそんなに変化がありません。当然、長年女性を連れてきたことはないようです。
これといって趣味もないAさんは、周りがボチボチと結婚しているのを見て、あと5年ぐらいで自分も結婚するのかな、と漠然と思っています。彼女がいないAさんは、結婚ということよりも単に彼女が欲しいという理由で、ネットで「モテ服」と検索して出てきた服を安く買ったりしています。そんなAさんは、キャバクラ通いするわけでもなく、パチンコに行くわけでもなく、特に浪費するような要素はありません。
住む場所だって学生の時と同じだから、家賃だって光熱費だって変わるはずはありません。にもかかわらず、Aさんの貯金はほぼゼロ。毎月の出費と手取りの給料はほぼ一緒です。ボーナスが出た時は、一時的に銀行口座の額が増えますが、それも徐々に消えていってしまうのです。不思議ですね。
贅沢も浪費もしないAさんのお金はどこへ消えていっているのでしょうか?
それは、なんとなくお金を払っている日々の生活の中に消えていってしまいます。
Aさんの生活を見ると、朝はコンビニで200円のブリトーと150円のコーヒー、健康のためにサラダも購入。なんだかんだで朝で500円は使っています。朝ごはんがコンビニなので、健康を気にするAさんはビルの地下街にある人気の海鮮居酒屋やイタリアンなどのランチをローテーション。ランチは1000円ぐらいが平均です。そして、夜は仲間と居酒屋で5000円ほど使う日もあれば、1人で牛丼セット620円の時もあったりします。結果的に、Aさんは1日の食事代だけで3500円ほど使っているのです。
ざっくり考えると、月で約10万円の食費。タバコを吸わないAさんですが、休憩中に飲む缶コーヒーやフリスクやらを購入することでプラス500円。食費だけでなんと12万円ほどになります。それは貯金なんて残るはずもありません。なんとなく買う洋服や携帯代、たまに買う電化製品などは、後々のボーナスを頼りにしながら細々と暮らしています。
同じ給料なのに……。Aさんが見て驚いたBさんの生活ぶり
一方、日頃から「考えて消費」しているBさんは、賃料が比較的安い都内の地下鉄沿線にある物件で1人暮らしをしています。職場まで満員電車に揺られるのはイヤだと思ったので、賃料が安めで比較的空いている路線のエリアを探しました。
Aさんのワンルームとほぼ同じ家賃の1LDKに住むBさんのリビングルームには、バング&オルフセンのオーディオセットとフリッツ・ハンセンのソファが置いてあります。家賃こそ安い部屋ですが、高級感が漂っています。Bさんの家に来客があった時はネスプレッソで抽出した濃いコーヒーを振る舞うのが常。女性が遊びに来た時なんかは、スターバックスで買ってきたバニラシロップを入れたアイスラテなんてものを振る舞ったりしています。
そんなBさんの家に誰かが来た帰り、車で送ってあげるという余裕もあります。そして、その車はBさん自慢のベントレー。Bさんの左腕には高級腕時計がキラッと光っています。週末、西麻布らへんに遊びに行くこともあるBさんですが、その際もベントレーでお出ましするため、アルコールは飲みません。しかもBさん、西麻布のパーキングメーターは19時以降タダで止められると知っています。誰かと遊ぶ時も車なので、場所は、深夜やっているオシャレなカフェが基本。終電を気にする必要もないですし、一緒にいる人を送って行ってあげることも可能です。近々、Bさんは親に婚約者を紹介する予定だそうです。
Aさんは、このBさんの部屋を見て、「同じ給料なのに、なんでこんな生活ができているの?」と、不思議に思っているようです。ですが、こうして比べてみると一目瞭然ですよね。
違いは、Bさんはちゃんと価値のあるモノを買っているところ。つまり、所有するモノはほとんど「売れる価値のあるモノ」です。もっと言うなら、Bさんの生活スタイルが「売れる情報」でもあります。
家具はブランド物ですが、中古で安く購入。ベントレーは250万円で買ったアルナージグリーンレーベル。車検代が約50万円なので維持費はかかりますが、土日しか車を使わないBさんは年間5000kmぐらいしか乗りません。駐車場代は2万円ですが、都心の5万円とかに比べるとだいぶ抑えられています。で、その他のモノはすべて維持費がかからないモノばかり。料理にハマっているBさんは休日に作ったモノを冷凍して平日も食べられるようにしています。たまに車でドン・キホーテに行ったりして、日用品とともに100円のカップ麺も保存用にたくさん買っておきます。しかも友達付き合いは昼間のカフェが中心なので、飲み代も抑えられます。
その結果、Bさんの食費は1日1600円ほど。月々約5万円です。かつて貯金を崩して買った高級腕時計は、予算を決めて買ったり売ったりしているので収支はマイナスになりません。ベントレーを買ったことにより貯金は200万円と少なく感じますが、250万円で再度売れたら450万円まで復活する予定です。その他のオーディオや家具代が約50万円。時計も家具もすべて売れれば、23歳で就職した時からすべてのボーナス支給額が口座に残っている状態となります。
AさんにならずにBさんになるためのポイントは?
ポイントは、価値ある消費をしつつ、抑えるべきところをきちんと把握したうえで節約しているところです。
一般的な視点で見ると、Aさんはどこにでもいるレベルの暮らしなので、特に注意するところがないように思えます。一方のBさんは、「贅沢だ」と攻撃の対象となったりしていますが、「哲学」を持って消費しているのでそんな批判を気にせず、自分が思い描いた楽しいプライベートライフを満喫しています。
いかがでしょう? 同じ所得でも、信念のある消費をすることによって、これだけ生活の充実度が違うのです。逆に言えば、いくら所得が高くても、考えないで目の前の浪費をするばかりに、一向に贅沢な生活ができないしお金が貯まらない、という人も多いですよね。
価値のある暮らしができるうえ、お金も無駄にしない。暮らしのレベルは、稼ぎだけではなく、いかに考えて消費をしているかで決まるのです。