今年も残すところあと半月。世のおじさんたちが「いよいよ忘年会か」などと鼻息を荒くしている裏で、今年も新入社員、万年ヒラ社員ら「忘年会の準備要員」のストレスはすでにマックスに達する勢いだ。

若手社員の宿命とも呼べる幹事。店選びは悩ましい問題だ
 
忘年会の準備で疲弊する若手社員たち
 リーマンの聖地・新橋にある一部上場企業に勤める新卒二年目の平本さん(仮名・24歳)は、酔ってもないのにすでにグロッキー状態。仕事よりも過酷な「忘年会幹事」を、不覚にも拝命してしまったからだ。
 
「今年は28日が金曜日で、多くの会社はこの日が仕事納め。新橋で28日に忘年会、しかも人数30名で2時間飲み放題、予算3500円って条件を突き付けられまして……。そんな店あるわけないんですよ。平日の閑散期ならまだしも、どこも予約でいっぱい。二次会は女のコのいる店、しかも二次会には大口の取引先企業のエライさんが顔を出すから、ロリ系の……いや、制服の女のコがいるところで、と。生ビール必須のカラオケ付き、予算はワンセット5000円以内とか……。ないです、そんなのないんですよ……」(平本さん)
 
 よさそうな店を見つけては上司に報告、その都度「実際に行ってみたのか?」とすごまれるため、自腹を切って「実地調査」に励む日々。カネや時間だけでなく、精神をすり減らしながら忘年会のショバ探しに明け暮れる日々が、11月の中旬から続いているのだというから笑えない。
 
 もちろん本業の方はおざなりで、同年代のライバルからは鼻で笑われているというありさまだ。自腹を切る、というパターンでは次のような事例も……。
 
店選びにウンザリ…上司の無茶ブリが酷すぎる
 港区の某ウェブコンテンツ制作会社勤務・棚橋さん(仮名・20代)が語る。
 
「わが社の忘年会は、会社の経費が使えます。しかしケチな上司が『ビタ一文、追加料金は払わん』とか『それも“幹事の腕の見せ所”』というスタンスで……。会社から出る経費は1人4000円。上司的には、生ビールとワインの飲み放題が必須で、とてもその金額で飲める店は港区にはありません。以前、後輩がこの条件で予約したという店がぼったくり店で。いわば騙された後輩は、追加料金に10万円近くを自腹で支払った挙げ句に、ことあるごとに嫌味を言われて、会社まで辞めちゃったんですよね。それでも上司の姿勢は変わらない。若手はあきらめて、普段から忘年会や新年会、暑気払いに花見用の店を開拓すべく、自腹を切って飲み、顔なじみになってここぞという時の“場所”を確保しています」(棚橋さん)
 
酒が入ればやはりその先はお決まりのパターン。いわずもがな、やはり「オンナ」である。普段はライバル関係にあるという某広告代理店とPR会社にそれぞれ勤務する、中本さんと市倉さん(共に仮名・30代)は今年も“対策”を練っている。
 
「忘年会は結局、接待。二次会や三次会には得意先が来ますし、必ず女性をつけないとダメなんです。でも、社員の若い子を差し出すわけにもいかず……。かといってプロのコンパニオンを呼ぶわけにもいかない。だから、知人のキャバ嬢などに頼み込んで、にぎやかし役として来てもらうんです」(中本さん)
 
「二次会と三次会で、中本君のところとチェンジ。お互いライバル企業に勤めていますが、遊び場は一緒だし、こういう時は持ちつ持たれつ。お互いの懇意のお店の女のコに、その(忘年会の)日はアルバイトしてもらってるんですよ。もちろん自腹ですし、10万くらい飛びます。でも、まあ……うま味はあるんですよね(笑)」(市倉さん)
 
 
ピンチをチャンスに変えるしたたかな一面も…
 
 2人はすでに新卒後10年以上勤務している中堅社員だ。表では「忘年会の女性調達要員」としてヘラヘラやっているが、そこにはしたたかな計算がある。
 
「ハニートラップとは言いませんが、高いバイト代を払うだけあって、彼女たちはいろんな話を上司から聞き出してくれます。場合によっては、我々を売り込んでくれる。若者にとって忘年会の準備がきつい? そう思うのでしょうが、上司や同僚、部下が一同に参加する忘年会を仕切るんですよ? そこにどんなうま味があるかを考えるべきです。すべてはこちらの思うがまま。いわば“ビジネスチャンス”なんです」(市倉さん)
 
ピンチをチャンスに変える、ではないが、海千山千、百戦錬磨のリーマン先輩たちが指南する忘年会活用術。年中仕事をしなければならないのか、という絶望感も確かにあろう。しかし、忘年会の準備に疲弊する若者たちに、ぜひとも参考にしてほしい実情……なのかもしれない。