住民税を滞納し、給与の差押えや高額な延滞金に悲鳴をあげている人たちがいます。「差押えを一時止めることはできないですか」「延滞金を無効または少なくするすべはないのでしょうか」など、多くの相談が弁護士ドットコムに寄せられています。
 
ある妊娠中の女性は、夫が独身時代に滞納した130万円の住民税に悩まされているといいます。役所に相談しても取り合ってもらえず、給与の差押えか、納付をするように促されたそうです。女性は「現在乳飲み子と、もうすぐ産まれる子どもがいて、とてもじゃないけど生活できる金額ではありません」と困惑している様子です。
 
差押えから逃れることはできないのでしょうか。また、住民税や延滞金が減ったり、なくなったりすることはないのでしょうか。安藤由紀税理士に聞きました。
 
●差押え回避のため、自治体に誠実に相談を
ーー住民税や延滞金を減らしてもらうことはできないのでしょうか
 
「とても残念なのですが、延滞した住民税や延滞金を減免してもらうことは基本的に無理です。ただし、あとで述べますが、差し押さえる財産がなければ、結果として数年後に支払義務が免除されるケースはあります」
 
ーー住民税を支払期限までに支払わなかった場合、差押えまではどのような流れになるのでしょうか
 
「まず督促状や催告書がきます。もうこの時点でいつ差押えがあってもおかしくはないです。差押えまでの期間は、数カ月の場合もあれば、1年以上の場合もあり、地方自治体によって全く異なります。ただ、『支払わない=即差押えだ!』というケースはほとんどないでしょう。
 
この状況にある人は、すぐに納税できない場合でも、まずは自治体の窓口に事情を話し、分割払いなど納付の相談をしましょう。約束を守れる範囲の少額でもかまいません。どれくらいの金額や期間であればよいかは、個々の事情によって、また自治体や担当者によってもさまざまです。
 
ただ、支払いも連絡も何もせず、知らんぷりしてしまうと、そのうち滞納処分として財産を差し押さえられます。今すぐ差押えされないためには『支払う気はある』『約束は守るからなんとか待ってほしい』ということを伝え、誠実に相談することがポイントでしょう。そして、約束は実際に守らないとダメです」
 
●財産がないと滞納処分の「停止」も
ーー差し押さえる財産が全くない場合はどうなるのですか
「差し押さえる財産が全くない場合、または、差し押さえてもなお支払いが足りない場合は『滞納処分の執行停止』となります。
生活保護を受けることになった場合や、高齢・障害などで資力の回復が難しいと判断される場合など、極度の生活困窮のケースも停止となりえます。停止期間が3年たつと、ここでやっと支払義務がなくなります」
 
ーー納付期限前であれば、住民税の減免申請はできるのでしょうか
 
「今回は延滞しているケースですが、もともとの納付期限前であれば、減免申請をすることができます。ただ、税金減免が認められるのは、よほどの事情(災害による損失が大きい、極度の生活困窮など)がある場合にかぎられます。
生活保護を受けることになった場合は、納付期限前のものは免除される可能性が高いです。急激に収入がおち、生活困窮となった場合は、納付期限前に窓口で相談することをオススメします」