電車の中で、10代後半っぽい男女の会話が耳に入ってきた。男の子が「なんか最近眠っても疲れ取れねえ~」と言う。すると女の子が「わっかる。なんか翌日にダルさ残るようになった。老けたなぁ」と返した。
「爪楊枝でシーシーしているおじさんの気持ちが分かりました」
歯だけではなく、変化は口臭にも表れている気がする。寝起きの口が鬼のように臭くなっているような気配がするのだ。
「花を見て、心が癒される。若い時にはなかった感覚」
「40過ぎたら毎日どこかが痛い」
「体が言うことを聞かない。すぐ息が切れる」
さすがに僕はまだ息切れに悩む年齢ではないけど、たしかに痩せにくくはなったし、あれだけ好きだったペヤング大盛りが完食できなくなってきた。他にも白髪もチラホラ出てきたし、なんか知らないけど肩から発砲音みたいなのがすることもある。少しずつ見た目が衰えていき、腹も餓鬼のように出っ張ってきている。これから先を思うと気が重くなる。
「季節のものが愛おしく感じる。今はツバメや紫陽花に見入ってしまう」
「心は枯れないということ。幸せな人を見たらうらやましがったり、嫉妬したり、恋をしたり、年とともに無くなり、悟りの境地に行くかと思っていたら、若いまま」
「採れたての野菜は美味しい」
ね? なんかこう、良いでしょ? 年を取って知ることは、別に辛いことばかりではないというわけだ。
加齢に伴って、涙もろくなってしまう人は多いけど、きっと情操が若い頃よりも豊かで、素直になっていくんだろう。加齢はたしかに不便をもたらす。だけど、その代わりに少ないながらもささやかなメリットも運んで来てくれる。なくしたものを数えるのもいいけど、たまには得たものを指折り数えるような年齢の重ね方をしていきたい。