九州北部豪雨で橋梁が流出し、一部区間で普通となっていた
昨年の7月の「九州北部豪雨」の被害によって、花月川にかかる橋梁が流出し、一部区間で不通が続いていたJR九州の久大本線。日田や天ヶ瀬温泉、由布院といった人気観光地を持ち、また大人気特急列車である「ゆふいんの森」号も走行する路線ということもあり早期復旧が待たれていた。そして約1年後の2018年7月14日、新しい花月川橋梁が完成し、久大本線が全線で運転を再開。それに伴い、迂回運転を強いられていた特急「ゆふいんの森」号も通常通りのルートでの走行となり、1年間同列車が経由することのできなかった日田、天ヶ瀬温泉エリアを中心に沿線も大きな賑わいを見せている。
由布岳を背景に走る「ゆふいんの森」号
こちらは水戸岡氏デザインの三代目車両
JR九州では今回の久大本線全線運転再開に合わせて「久大本線全線復旧つながるプロジェクト」を発足。復旧初日となった7月14日には久大本線沿線各地で、「ゆふいんの森」1号の通過に合わせ、沿線自治体6箇所で「ふうせんリリース」を実施。快晴に恵まれた当日の青空に、様々な想いを描いたふうせんが舞い上がった。そんな感動風景が繰り広げられた当日の様子が先日、プロジェクトのオフィシャルサイトに公開されたので是非見てみよう!
新しく架けられた花月川橋梁
2018年7月14日撮影
昨年の九州北部豪雨で流出してしまった花月川橋梁
2017年7月17日撮影
運転再開当日花月川橋梁を渡る初代「ゆふいんの森」号
2018年7月14日撮影
 
運転再開に合わせて大分県のPRイベントが開催
今回、運転再開に合わせて東京都内では大分県のPRイベントが開催。当日はJR九州の各観光列車のデザインを担当しているドーンデザイン研究所水戸岡鋭治氏、由布院温泉観光協会会長桑野和泉氏、JR九州執行役員営業部長赤木由美氏が出席。各々の観点で久大本線を語った。
 
JR九州の様々な列車デザインを担当する水戸岡氏
三代目「ゆふいんの森」号の車両デザインを担当した水戸岡氏は「水、山、川、里山と日本の懐かしい風景が久大本線には詰まっている。初代のゆふいんの森号が運行を開始した際、いまだかつてない観光列車を作り上げる意識でJR九州が取り組んだ。初代ゆふいんの森号のイメージを踏襲しつつ、オンリーワンの車両を作っていくという作業は大変でしたが、実際に走る沿線の人々に話を何度も聞いたり、その場所の風景を見ながら作り上げました」と語る。水戸岡氏がデザインをした三代目「ゆふいんの森」号は、初代車両と共に現在「ゆふいんの森」号専用車として活躍中だ。どちらの車内もビュッフェスペースがあり、車内にいながら沿線の味を楽しむことができるのも楽しい。
 
久大本線と由布院への愛を語る桑野氏
由布院温泉観光協会会長桑野和泉氏は「実はゆふいんの森号が走る前の由布院の町というのは今ほど人気があるわけでなく、奥別府由布院と呼ばれていました。ゆふいんの森が走り始めてから約30年ですが、由布院の町は大きく成長し、今では国内外から来ていただける町になりました。これからも久大本線、そしてゆふいんの森号と共に成長していきたい」と力強く語った。
 
ユーモアと共にJR九州のビジョンを語る赤木氏
JR九州執行役員営業部長赤木由美氏は「当社の一番のライバルは自家用車です。弊社は本当に貧乏な会社で(笑)、みなさまに乗っていただかないことにはどうにもなりません。だからこそオンリーワンの鉄道であったり、地域のみなさまとの連携を密にしていきたい」と語った。またその後の記者会見では、デビューから30年を迎える初代ゆふいんの森(キハ71)の更新について言及し、「いずれその時期が来ると思いますが具体的な計画はまだ未定」(赤木営業部長)とのことだ。
 
久大本線の今
さて、話題を久大本線現地の話に戻そう。先の話にも登場したとおり、久大本線沿線は福岡からもアクセスがよく、観光地が多く点在する。なにより、久大本線自体のロケーションがすばらしい。久留米と大分を結ぶ久大本線は、玖珠川と共に山間を縫うように走り、いくつものトンネルと橋を通り、途中、日田、天ヶ瀬、由布院と九州を代表するスポットを結ぶ路線だ。
山を越え 川を越え走る久大本線はまさに絶景!
日田といえば、今年も最高気温の高さで話題になったがこれからのシーズンは、暑さもおだやかになりとても過ごしやすい。名物の日田やきそばは店ごとに味わいが異なるので食べ比べてみるのもいいだろう。日田からもう少し東に行くとあるのが名湯天ヶ瀬温泉。こちらの温泉は川のほとりにある露天風呂が名物だが、若干「オープン度」が高い混浴になっている。でも、気軽に入浴を楽しみたい!という女性のためにこの度、2箇所の露天風呂で使用可能な公式の「湯浴み着」のレンタルが開始された。
 
さらに東に進むと国の登録有形文化財にも指定されている「豊後森機関庫」がある豊後森、そして九重、玖珠エリアに入っていく。日本最大クラスのスケールを持つ人道専用の九重”夢“大吊橋を始め、多様な温泉郡など見どころが満載だ。
 
そして由布院は温泉、その町並み、そして由布岳の雄大な姿が魅力的な観光地。由布院駅にはホーム上に足湯もあり、足湯券を購入すれば絵はがき調の足湯券とタオルがついてくる。久大本線を行き交う列車たちを眺めながら入る足湯は格別だ。
また、2018日12月24日まで車内で本格的なスイーツのフルコースを楽しむことのできる観光列車「或る列車」が大分〜日田間で運行されているのも見逃せない。
期間限定で運行中の「或る列車」
「或る列車」の車内 ラグジュアリーな空間だ
「或る列車」では久大本線の車窓と共にスイーツコースを楽しめる
久大本線へは博多駅から発着している特急「ゆふいんの森」号、特急「ゆふ」号が便利。「ゆふいんの森」号は全席指定で、週末を中心に特に混雑するので指定券の確保はしっかりと行いたい。特に三代目車両で運行される列車が混雑傾向にある。
 
指定席特急券は全国のJR駅内みどりの窓口のほかJR九州のオフィシャルサイトでも購入可能。なお、ゆふいんの森1・2・5・6号は三代目車両、ゆふいんの森3・4号は初代の車両での運行となっている。なお、検査等がある場合は特急「ゆふ」号として一般特急車両運転される。
 
「或る列車」に関しては或る列車オフィシャルサイトから申し込み可能。
暑さやわらぎ、季節が進めば紅葉も美しい久大本線へぜひ出かけてみよう!