天災レベルの猛暑が続き、大変な騒ぎの平成最後の夏。そんななか、よく聞くのが「夏場のエアコンは、冷房にして設定温度は28℃。風量自動で24時間つけっぱなしのほうがお得である」というウワサだ。果たして、このウワサは本当なのか? 電力会社やエアコンメーカーに取材し、真偽のほどを確認してきた。今や生死にかかわる夏場のエアコン問題を解決する!
まず問い合わせたのが、電力会社・東京電力エナジーパートナー。同社広報によると「一般的な家庭用のインバーターエアコンは、立ち上がり時に多くの電力を消費します。こまめにスイッチを入り切りすると、そのぶん消費電力は多くかかってしまいます」とのこと。では、エアコンをつけっぱなしたほうがお得かというと、そうでもない。
「家庭用エアコンは機種や製造年、部屋の気密性・断熱性、外気温と室温の差などで、消費電力が大きく変わります。お住まいの気候性や立地、使用する季節や時間帯によって左右される部分が大きいので一概につけっぱなしがお得とは断言できません。また、電気の契約プランによっても消費電力あたりの電気料金は変わります」(東京電力広報)
電力自由化以降、エアコンをお得に使うにも大変なシミュレーションが必要になってきたようだ。ただ、大切な部分は以下の3点に集約される。
①エアコンの立ち上がり時には電力が多く消費される
②外気温と室温の差が大きいと電力の消費が大きい
③使用機種のメーカーや製造年で消費電力が異なる
◆同じようで違う!エアコンにもメーカーごとに特長がある
次に問い合わせたのは大手エアコンメーカー・Panasonicの広報だ。
「エアコンは、立ち上がり消費電力がありますので、30分から1時間程度の外出時であればスイッチを切らないほうが消費電力が抑えられるケースが多いと思います。また、弊社製品に関しましては24時間連続運転は積極的に奨励はしていません。消費電力のこともありますが、運転が止まっているときに作動するお掃除機能などがありますので」とのこと。
たしかにPanasonic製のエアコン(エオリア)には「おでかけクリーン」や「フィルターお掃除ロボット」など、外出時、非運転時に主に作動する機能が装備されている。24時間運転しっぱなしだと、これらの機能の恩恵は受けられない。実はエアコンは、同じようでいて各メーカーごとに特長が以下のように異なっている。
Panasonic・シャープ→自動掃除・除菌など衛生機能が充実
三菱・日立→顔センサーなどで、こまめな対人送風・温度管理が得意
ダイキン→立ち上がりのパワー重視
富士通→コンパクト・省スペース
東芝→空気清浄&省エネ特化
こうしたエアコン各機種の特長を押さえておくと、お得な使い方ができるだろう。自室の環境によって向いている機種も変わるので、買い替えの際にも役立つので、ぜひ覚えておこう。
◆エアコンは24時間つけっぱなしがいいかどうかはケースバイケース
取材した結果を総合すると、夏場のエアコンは24時間つけっぱなしが最適かどうかは、ケースバイケースで必ずしもお得になるわけではないということ。身も蓋もない結論で申し訳ないが、「エアコンの多機能化」「電力自由化」など、昨今のエアコン事情は非常に複雑になっている。いまや一概に結論づけできないのが、夏場のエアコンつけっぱなしお得問題。ある人のお得なケースが、自分にも当てはまるとは限らないということは、覚えておいてほしい。少なくとも、長時間、家を留守にする場合は、エアコンの電源はオフにしたほうがいいだろう。
このほかにも、「扇風機と併用する」「こまめなフィルター掃除」など、エアコンをお得に使うポイントはたくさんある。資源エネルギー庁のHPで「家庭の省エネ徹底ガイド」というパンフレットが配布されているので、参考にしてほしい。
猛暑が続く今年、室内でも熱中症にかかるリスクが高まっている。電気代を気にして、最悪死んでしまっては元も子もない。暑いときはためらわずにエアコンのスイッチをONにしよう。