今や40代男性の3人に1人は未婚と言われる時代。「結婚こそ幸せ」という時代は過去ものとはいえ、結婚相談所のドアをたたく人も少なくありません。いざ婚活をスタートし、「すぐに結婚できる人」と「できない人」にはどんな差があるのでしょうか。『男の婚活は会話が8割 「また会いたい」にはワケがある!』の著者、植草美幸さんが実際に見た「結婚するのが難しそう」な男女とは?
私は青山で結婚相談業を経営している現役の婚活アドバイザーで、毎日のように未婚男性からの相談を受けています。もちろん、未婚男性といっても、タイプはそれぞれですが、時に結婚後の家計についてまったく想像力不足な男性に出くわすことが少なくありません。
せっかく結婚が決まりかけたのに…
結婚相談所を利用したことがない人からすると、相談所とはいったいどういうものなのか、未知の世界でしょう。私が経営する相談所の場合、利用者は男女ともに20歳から60代までと幅広く、海外に駐在している方も相談にいらっしゃいます。また、お見合い相手は、同じ協会に属している全国の相談所の会員約6万人から探せるようになっており、登録している人の職業も一般の会社員から公務員、医師や弁護士までさまざまです。
安定した仕事に就いている人が多いと聞くと、経済観念もしっかりした人が多いと感じるかもしれませんが、意外と多いのが結婚後の生活にいくらかかるかわかっていない人です。49歳の会計事務所オーナー、Nさんもそんな1人でした。
彼は都内に戸建てを持ち、自宅から30分程度のところにある会計事務所に通勤しています。大学入学とともに上京し一人暮らしを始め、それから早30年。50歳近くになった今、「子どもが欲しいから30代後半までの女性を紹介してほしい」と相談にみえ、婚活をスタートさせました。
婚活スタート後、積極的にお見合いを続けたNさん。しかし、50歳初婚となると結婚に夢を見がちで、紹介する女性に対して、顔がブスだのもっと若いほうがよいだのとリクエストが多いのです。その後、やっと37歳の女性とご縁があり、結婚が決まりかけたある日、女性のほうから「交際を終了したい」という連絡が入りました。
理由を聞くと、「彼が結婚後、『仕事を辞めて専業主婦になってほしい』というので、『家計はいくらくらいでやりくりすればいいでしょうか?』とたずねると『10万でできるよね?』と言われた」と言うのです。これでは、結婚生活ができないと女性は判断したのでした。
私が男性に「そんなこと言ったの? 10万の根拠は?」と理由をたずねると、「自分は毎日コンビニで1食500円のお弁当を買っていて1日2食なので、30日だと食費は3万円です。そうなると、食費としては2人で、月5万円で十分でしょう。あとはお小遣いで十分じゃないでしょうか」と言うのです。
「結婚すると、今の2倍おカネがかかる」という勘違い
そこで私が「専業主婦といったって、美容院にも行くし病気にもなるのよ。服だって下着だって傷むのよ。日用雑貨は? 光熱費は? 冠婚葬祭などの交際費は? 生命保険代は?」などといろいろと質問すると、「え! そんなにかかりませんよ。彼女も家にいて専業主婦なんだからおカネを使うところもないと思うんです」と言うのです。
つまり、プロの会計士であっても、結婚後の生活にどういったものが必要なのか、あるいはいくらかかるのか、ということが想像できないわけです。
一方、「結婚すると、今の2倍おカネがかかる」と考えている男性もいますが、丸々2倍にはなりません。というのも、家賃は、それぞれが支払っていた家賃の合計ではなく、一緒に住むのですから一人住まいの家賃×1.5程度になると考えていいと思います。光熱費なども同様ですし、車を持つようなら、一緒に出掛けるようになると交通費もそれぞれが払っていたのが一人分減るわけです。食費にも同じようなことが言えるでしょう。
このように、「結婚後にかかるおカネ」についてあまりわかっていない男性は、意外と少なくありません。にもかかわらず、結婚後の家計の話をする人が多いので、せっかく結婚に向けて交際が順調に進んでいたのに破談になる、ということもあるのです。
前述のNさんもそうですが、男性が「結婚後の生活は独身時代とは違う」ということについて無知なせいで、せっかくのご縁がダメになってしまうのは、とてももったいないことです。こうした男性には、「結婚しても気ままさは失いたくない」「責任は負いたくない」という気持ちがあるのかもしれません。
一方、女性のほうが、経済観念はしっかりしている人が多いと言いますが、実は意外と何も考えていない人も多く見受けられます。活動をスタートする際に「結婚相手に求める年収は?」とたずねると、「1000万がいい」という人がいます。そういう人にかぎって、家計が本当に1000万もかかるのかの計算ができていないのです。高所得者はおカネを稼ぐことの大変さをよく知っているので、生活費は最低限しか渡さない、というケースもありますが、それを知らない女性も多いのです。
また、昨今は男性より稼ぐ女性が増えていますが、なぜか日本人の女性は結婚後の生活費は男性が負担するものだと思い込みがちです。昭和時代に生まれた、古き良き時代の結婚スタイルを経験している母親から結婚観をすり込まれているのです。
昭和の経済観念を家庭に持ち込んでくる女性
昭和の時代は、専業主婦の割合が今より高く、現在30代の独身女性の母親がほぼこの世代にあたります。なので、男性側が「結婚後も妻が働くのなら家計を支えてくれるだろう」と思っていたとしても、女性側はなぜか「私も働くけれど、生活費は男性に負担してもらう」という専業主婦の観念をこの時代の結婚に持ち込んでくるのです。
男性の「結婚後の生活費が想像できない」という幼稚な経済観念や、女性の「自分が働いたとしても生活費は男性が負担するもの」という古びた経済観念。どちらも現実問題として結婚相手を探す際の妨げとなっているのです。
それでも、「家庭の経済」の話をせず、お互いの考え方に食い違いがあるのを気がつかないまま食事や映画などデートを重ね、相手のうわべを見ただけで結婚を決め、その後破談するカップルもたまにいらっしゃいます。成婚退会後に、「1000万円も稼いでいるのに家に入れるのはこれだけ?」と言う女性と、「仕事も残業もしていて、家事もろくにしないのに生活費は入れないのか?」となる男性が出てくるわけです。
こうした「ミスマッチ」が起きないように、私は結婚後に家に入れるおカネまで当事者にヒアリングしたり、交渉したりしています。結婚相談所は結婚相手を紹介するところですので、本来は結婚後の家計のことまでは介入しません。しかし、成婚後の破談を回避するためにも、安心して結婚するためにもこうしたサポートは必要だと思っています。
「お見合い」で相手を決めるということは、条件ありきで相手を決める結婚のスタイルですから、「こんなはずじゃなかった」ということは回避したいものです。