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▼2月のあなたはブロンズランクでした

焼酎飲み続けて微笑みながら息を引き取った70代男性

 
56.4%の高齢者が「自宅で最期を迎えたい」と望んでいる(2014年内閣府調査)にもかかわらず、自宅で臨終を迎えるのは12.8%(2012年厚労省公表データ)に過ぎない。在宅死の難しさはこのギャップに表われている。
 

だが、看取った直後に家族がピースサインで写真に収まる──そんな光景が現実に存在すると証明したのが、日本在宅ホスピス協会会長の小笠原文雄医師だ。今年6月に発売され、7刷を重ねる話題作となった小笠原医師の著書『なんとめでたいご臨終』(小学館刊)には、そんな故人と遺族の写真が多数掲載されている。

 大好きな焼酎を自宅でグビグビ空けながら笑って逝った人もいる。上松秀雄さん(仮名・70代)は肝臓に転移した状態で肺がんが見つかった。余命は半年だった。

 元医師の上松さんは当初、在宅死を拒み、その理由を小笠原医師にこう打ち明けたという。

「勤務医時代、がん患者に対して抗がん剤を使ったけれど助かった患者は1人もいなかった。そんな風に患者を苦しませていた僕が抗がん剤をやめて、家で緩和ケア(*注)を受けたいなんて許されないでしょう」

【*在宅ホスピス緩和ケア/在宅で痛みや苦しみを和らげる治療を行なうだけでなく、患者の不安や悩みに寄り添う精神的なケアも行なう】

 悲壮な決意を口にする上松さんの姿が悲しく、小笠原医師は焼酎が大好きだという上松さんにこう話したという。

「飲んだらいかがですか? 死んだら飲めませんよ」

 すると上松さんは考え込んだ後、こう呟いた。

「在宅での緩和ケアなら焼酎が飲めるのか……」

 上松さんが自宅での緩和ケアを受け入れた瞬間だった。ある時、上松さんはこんなことを言って、小笠原医師を驚かせたという。

「先生、痛い時に焼酎をグイッと飲むと治まるんだ」

 その後、小笠原医師はモルヒネ投与を中止。上松さんは最期まで焼酎を飲み続け、微笑みながら息を引き取ったという。

「過去に苦しみ、もがいていた上松さんが、ひとりのがん患者さんとして大好きなお酒を飲み、笑顔で過ごしていることを、医師として嬉しく思いました」

 自身の生きてきた道にとらわれすぎず、「今を楽しむ」気持ちを持つことも大切なのだ。

「人は生まれる場所は決められませんが、死に場所は自分で決められます。ところ定まれば、こころ定まる。在宅死とは“暮らし”の中で旅立つことです。在宅ホスピス緩和ケアなら“最期までここにいたい”という願いが叶う。だからこそ穏やかに死ねるのです」